柘榴

無珍先生がはじめて柘榴を食べて、ほおばったその口からつやつやしたルビー色の粒をこぼしながら「メロンとライチの次に好きだ!」と相好を崩している。小学3年生のガキンチョの「おいしい!」と思う心の跳躍は、私なんぞが「おいしい!」と思う心のたぶん10…

たまにだけど4月に雪がふる (Sometimes it snows in April)

長い戦いのあと トレイシーが死んだ あいつの最後の涙を わたしが拭ったすぐあとで たぶんあいつは まえよりうまくやってる とり残されたまぬけより ずっとずっとうまく あいつはたったひとりのともだちだった わたしはトレイシーのせいで泣いた あんなやつ…

死刑について

一人の人間が一人の人間を殺すことは、マンガや大藪春彦の世界を除き、普通は死刑とはいわない。十人が殺す場合はどうだろうか?百人だったら?あるいは千人だったら?日本の場合は一億人である。一億人が一人の人間を殺すことに合意している場合は、一般常…

チョビット

バルセロナでバルにいって飲み物の表を眺めているとウィスキー関連のあたりに量の目安で"Chupito"書かれている。この言葉はショットグラスを意味している。発音が"チョビット"。日本語の「ちょびっと」と音がほぼ同じだし、意味もまさに「ちょびっと」。仰天…

無珍先生の帰還

無珍先生がドイツに帰還して3ヶ月半になる。彼は結局、1年を日本で過ごしわたしのもとに戻ってきた。戻ってきた、というよりも、あれやこれやの大人の事情で戻すことにした、というのが正しい。5歳の子供はまだ、悲しいほどに素直で泣きたくなるほど大人の言…

文学の普遍性

中国人の共同研究者がいった。「まずはソーシャライズ、そのあとでビジネス、まさに東アジアの私達の社会ですね。やっぱりあなたは東アジアの人だ」私は答える。「ありがとう。でも東アジアだけじゃないんだよ。どこだってそうだ。僕らは我々を東アジアとし…

スカイピング

最近は実に便利なもので、テレビにHDMIで接続するスカイプを内蔵したカメラなどがあり、気軽にアクセスできる。スカイプコールはリモコンで受けることができるようになっている。受けるのは私の母であるが、接続を切るのは無珍先生もできるようになった。毎…

「日本を、取り戻す」

4週間ほど日本に行っていた。うち2週間は無珍先生と過ごし、2週間は大阪で仕事をしていた。計測開始以来という猛暑に居合わせたのにはまことに閉口したが、すくなくともそこにいたということでなんとなくオリンピックは参加することに意義がある的な気分であ…

カルフォッチ・デラ・ジュディア

ユダヤ風アーティチョーク。ローマのユダヤ人地区の料理。深鍋に熱したオリーブオイルでじわじわと揚げたアーティチョーク。花弁の先端部分は芯が硬くて普通は食べないのだが、こうして食べると揚げた鮭皮のようにパリパリと食べることができる。ドライフラ…

人と人が会うということにこれほどまでも礼儀正しくなんらかの状況を仮定しなければならないそんな片苦しさを社会に内包してしまった不幸な社会を目前にして私は、「寂しいですね」といった瞬間に正しいことを言ってしまった、そのほろ苦さにじくじくくさり…

311

2011年の3月11日は、ローマの近くで院生たちに講義をしていた。授業中なのにイタリア人の若者は、「大変だ」と教壇までラップトップをもってきてYouTubeの動画を見せてくれた。津波が渦を巻いていた。2012年の3月11日は新宿のゴールデン街でコスタリカ人と飲…

無声慟哭

朝の5時半、寝ていた無珍先生が起こされた。「いいかい、パパは今ドイツに戻る。無珍先生はネエネと日本で暮らすんだよ」私はそう伝えた。無珍先生は目を見開いた。その目がみるみるうちに潤んでいった。たちまち大粒のナミダがボロボロと流れた。しかし表情…

イデオロギー

気温が摂氏15.0度である。これは測定値であり、厳密に測定された値である。一方、15.0度の屋外において半袖で1時間過ごしたときにどれだけの人間が風邪をひくか、という統計値があったとする。仮に100人に1人が風邪をひく、という結果だったとする。なにもし…

2012年年末・日本

年末に3週間ほど日本に帰国していた。なんだかんだいってクリスマス直前までデニーズに通って仕事をし、明けて3日にはこちらに戻ってくるという何しに行ったんだか、という滞在ではあったが、いちばんの目的であった無珍先生を日本の幼稚園に通わせる、とい…

自民党が大勝だったそうである。 これから20年で原発段階的に廃止だと50%くらいの確率で次の事故が起こる。 この事故の確率の見積もりは私が適当に書いているわけではなくて、国家戦略室の発電コスト推定が前提にしている。http://jun-makino.sakura.ne.jp/a…

マッチ擦るつかのま庭は黴むせて

イギリスの東海岸の あれはどこだか忘れてしまった ジットリとした ヒンヤリとした ムシムシとした 台所のドアをそっとあけて 音をたてずに外にたってみる 暗い雲に空気はいよいよ淀んでいる 寒いはずの空気 じめっとしたワイシャツがなにやらまとわりつき …

歳をとった人間は人相について語り出す。私はそれがどうしてもキライだった。人相で人のことは判断できない。そう考えてきた。外見で人を判断するなんて、なんてダメな判断力。そう考えてきた。とはいえ、東京都知事とか副都知事、すなわち石原慎太郎とか猪…

ドイツの税関に電話してみた

先日フランクフルト空港の税関のことを書いたら、数万のアクセスがあったので、結構気にしている人が多いことがわかった。そこで、多くの人が一番気になるであろう「ドイツ国外からラップトップを持ってドイツに滞在する場合」について税関に電話して聞いて…

フランクフルトの税関

このところフランクフルトの税関で立て続けに演奏家のバイオリンが課税対象になってその場で払えない高額であるため没収された、という件が話題になっている。http://matome.naver.jp/odai/2134941753199027401http://nofrills.seesaa.net/article/296070497…

2012年9月28日夜 霞が関

日本でワークショップの講師をするため5日ほど出張した。時間をみつけて金曜の官邸前のデモに参加するつもりだった…のだが、山の中にカンヅメになっていた出張先からの移動に遅れて20時には間に合わず、それでも官邸前まで足を伸ばしたのだが、交差点の向か…

ケンカのイロハ

東京都の副知事である猪瀬直樹が一ヶ月前に次のような発言をしている。 泳いで来るのだから、こちら側から蹴りを入れれば一発だよ。水に顔を突っ込み、参ったかとやりグロッキーにして上陸させず来た船に帰してやればよかっただけのことだよ。こんなもん、ケ…

フィンランドの国際化

フィンランドのことでメモしておくべきことがある。2007年に教えたときと、今回2012年の大きな違い。学生の構成である。教室にやってくる学生は、院生からポスドクたちなのだが、2007年の時点ではそのほとんどがフィンランド人だった。留学生というと、スウ…

ボルドー断章

7月から8月半ばまで、夏だというのに申請書だの原稿だのフィンランドのプログラムだの〆切がいろいろあって、ドタバタしていた。技術関連のミーティングに登録したら、会議の紀要に論文を書くことが必須なのだという。生物系だと概要だけ書いて発表なので勝…

トゥルク・フィンランド

最初にトゥルクに来たのは2007年だった。60人乗りの小さなプロペラ機で到着した飛行場でスーツケースが出てくるのを待つ。ベルトコンベアがぐるっと回っているその真ん中に、巨大なムーミンが手を広げて立っている。そういえば5年前も4年前もこのムーミンは…

官邸前の難民

タイミングがあうとうちの車に同乗するヒッピーのような長髪の宇宙物理学のドイツ人に「ヒッグス粒子もりあがっているねー、パーティーはどんな感じ?ノーベル賞だね」と今日聞いてみたら、「いやはや、残念なことだ、見つからない方が面白いのに」などと斜…

表象と代議制

無珍先生は10までは数えられる。なおかつ58だけはゴジュウハチと知っている。いつも駐車する場所が58番だからである。で、隣に59という数字が壁にかかれていたので無珍先生に「あれいくつ?」と聞いたら、ちゃんとゴジュウキュウ、と答えた。「無珍先生は天…

官邸デモと書式システム

官邸を包囲するデモが毎週金曜日の夕方に行われ、週を経るごとに参集する人数がどんどん増えているのだそうである。私も東京にいたら出かけることだろう。デモというのは体感しないとわからないことがある。この点に関して5年前に書いたことがあるのでリンク…

理解という許容

われわれが避けねばならぬのは、「理解するよう努める」ということの罠である。つまり、低線量被曝の確率的な健康被害が決着のつかぬ議論となる主要な理由は、誰もがそれを「理解しよう」と努めることにある。そういった態度の紋切り型の一つに従えば、「何…

愚弄の追認

原発の再稼働に急ぐ電力会社・野田政権・および経団連などの動向を耳にするにつけ、よくもまあ、人々をここまでコケにできるものだ、と私は思う。これは再稼働が妥当かどうか、という判断以前の問題だ。コケにされている圧倒的人数は不満を述べている。しか…

ルヴァン

ベルギーのルヴァンという街にいってきた。ブリュッセルからも車で30分弱とかで、そんなに遠くないのに、言語ががらっと変わるというのがいかにもヨーロッパな感じである。オランダ語を喋る地域で、この言語を英語だとフレミッシュという(日本語だとフラマ…