無珍先生概況

無珍先生が言葉をいくつか喋るようになってきた。お得意の言葉は"Nein!"である。うんこはカカ。トイレに連れて行け、というときはシーシ、と絶叫するが、トイレのことをシーシ、と定義しているらしい。私のことは"ニニ"といったり"パパ"といったりする。"パパ"は、保育園の先生が仕込んだらしい。義理の妹は"ネーネ"。私や義理の妹を"ママ"といったりすることがあって少々ドキドキするのだが、食卓を囲むことを"ママ"と言っていることがこのところわかってきた。"ママ!"と何度も叫んでいる時は、腹が減っている時か、飯を食おう、と誘っている時である。あるいはおもちゃの食器を床にあつらえて、一緒にままごとをしよう、というときも"ママ!"。牛は”モーモ”。通勤途中に牧場の中を通過するので、日によっては牛の群れが草を食んでいる。毎回それを見ては"モーモ!モーモ!"と大興奮して絶叫する。

家ではおおいに甘えているが、保育園では年下の面倒などをみているらしい。一才半からのクラスなので、入ってきたばかりの子供は5ヶ月年下ということになる。慣れなくて泣きじゃくる新入生に、おしゃぶりを持っていったり、なでなでをしたりして励ましているのだという。そんな姿をみたことがないので、すごいものだな、と思っていたのだが、この間、膝に無珍先生を乗せていたときに、私がぶひゃっとくしゃみをしたら、胸をぽんぽんとたたいて、なんどかさすってくれた。油断も隙もない。

松田先生の「育児の百科」その他育児書によれば1歳10ヶ月であればもっと複雑なことを喋っていても良さそうなものであるが、バイリンガル環境にいると言葉を喋りだすのが遅れるそうである。研究所に付属の保育園ではバイリンガル環境の子供が半分以上、トリリンガルも結構な人数である。例えば母親がイタリア人、父親がスコティッシュであれば、親同士が英語で喋り、母親はイタリア語で喋りかけ、保育園ではドイツ語、ということになる。そうした親の間では、どの程度言葉を喋ったのか、ということが結構な立ち話になるのだが、一様に「バイリンガル環境だと言葉が遅れるんだよね」「そうそう、そうらしい」「ましてやトリリンガルだし」と互いにうなずき合っている。まあ、どの親も不安なのだよな。