秋葉原 20080608・20090927

東京・秋葉原で無差別殺人の起きた昨年6月8日。実行犯であったKが一人の警官に追い詰められ対峙した様子はとおりすがりの人間によってビデオ撮影された。少なからず事件に関心をもった私もまた、そのビデオを眺めた。歩道もないビルの間の四角い回廊で繰り広げられる警官と実行犯の緊迫したにらみ合い。時代を画す事件が起きたその場所はあまりにも普通の東京の裏通りだった。
今年9月27日、在日特権を許さない市民の会秋葉原でのデモがあった。車道を行進する500人ほどのデモ参加者。歩道で「排外主義反対」というA4の紙を胸元に携え、反対に反対した人間が一人いる。常野さんである。彼はあっという間に「シナ人はでていけ」と口々に叫ぶ多数のデモ参加者に囲まれ、殴られ、彼らが携えていた日章旗で叩かれ、突かれた。常野さんは、殺せ殺せという怒号に囲まれながら、かけつけた警官数名に守られひきづられるように現場を離れた、その四角い回廊の様子をビデオで眺めながら、私はまずじぶんが同じようにアメリカと日本でそれぞれ「ジャップ」、「ヤンキー」と矛盾する国籍アイデンティティーで罵倒されながらボコられたのをすぐに思い出した。同時にYoutubeに流布した08年の無差別殺人の光景、現場も思い出さずにはいられなかった。Kは一人だった。殺されたのは複数だった。常野さんに殴りかかった在特会はほぼ無名の複数。リンチという事態からはかろうじて免れたがあざだらけになった常野さんは一人だった。
common denominator。なにか鏡像のようなものがそこにはある。それが同じ秋葉原だったのはたんなる偶然、とは私にはどうにも思えない。うまく説明できない。時空は本来均質なものだ。でもそこでは時間の前後が逆転している。あるいは時間がそこにはない。空間が異様なまでの強度で存在している。殺到する集団、「殺せ」という無名の怒号。常野さんに殺到し徹底排除をあくまでも善意で行うこの無名の人々。殺せ殺せ。Kの叫びがその秋葉原のビデオにも木霊していた。
脳幹ほぼ全滅と宣告され、彼女は臓器提供にどのような意見をもっていたか、と医師にきかれてぼう然自失した2月の私を、彼女を守れ、暴れろと叱り飛ばしたのも常野さんだった。2時間の仮眠から起き抜けだった私はそれで殴られたみたいに覚醒した。すべてはどこかで繋がっている。

排除する/される/したい/しない/させない。

リンク

YouTube - 在日特権を許さない市民の会 09年9月27日in秋葉原
http://www.youtube.com/watch?v=Q8b2wivPsyE

秋葉原デモで感じたこと
http://anond.hatelabo.jp/20090928151627

リンチ上等と反日上等 - 地を這う難破船
http://d.hatena.ne.jp/sk-44/20090928/1254137203