An Introduction to Park a Car

家の周りの路上駐車状況があまりに混んでいる。特に夜半、24時をすぎると駐車スペースを発見することがほぼ不可能になる。早く家に帰りたいのに、15分以上ぐるぐると目を皿のようにしながら探し回っていれば、時間のムダと燃料のムダに怒りと苛立ちで頭が爆発しそうになる。結局判断力が低下し途中であきらめてここでいいや、となげやりな気分で駐車禁止の場所に車を止めると、翌朝にはかならず駐車違反の切符を切られており、それがあまりに頻繁なので(二週間の間に6枚のキップ、である)、げっそりするだけではなくこれは深刻な事態であると認識するに至った。そんなわけで観念して、有料駐車場を探すことにした。斜め向かいにある観光客がよく使っている公共地下駐車場に(近くにうちの街のメジャーな観光スポットがあるのである)駐車スペースを月単位で借りることができないか、と思いつき、街の公共駐車場管理事務所に問い合わせたらすぐに借りることができた。思っていたよりもかなり安かった。この二週間に科せられた罰金とおなじぐらいである。12月1日からどうぞ、との書面が届いたので、その指示にしたがい昨夜入構するためのカードを受け取りに駐車場の受け付け窓口に赴いた。すぐに終わると思って空手の稽古の前に行ったのが、これがすぐには終わらなかった。
受付のオヤジは、うさんくさげに私を上から下へとながめたあと、私の身分証明書、車検証を確認し、所定の書式にサインしてからカードの使用法の詳細と注意を延々と演説しはじめた。微にいり細にわたる説明。通常の一般利用者は、入構するさいに、ボタンを押して自動的に印刷される紙製のバーコードチケットを受け取り、同時に車止めが上がって入構、いざ駐車となる。私の場合は、チケットを受け取ってはいけないし、カードを差し込んでもいけない。カードを機械の前にかざすのである、とおごそかに宣言した。要するにただのチップカードなのである。ははん、と私は了解したのであるが、しかしそのカードの非接触認識システムを彼はとても気に入っているらしい。
さて、実習である、と彼は私を受付の部屋から出るように促し、次のステップへと進んだ。入り口のチケット発行機械の前に二人で立つ。一般の客が来るのをまず待とう、と彼は宣言し、殺風景なその場所で黙って我々は待った。数分後に車を乗り入れてきた客が機械の前に停車しる。機械に並んでたつ私たちに不審がったその女性ドライバーは、なにか問題が起こったのでしょうか、と私に聞いた。いや、なんでもないんです、練習なんで、と私が答えると、その女性ドライバーはさらにけげんな顔をした。その様子をまったく気にせず、受付のオヤジは女性ドライバーに、さあ、そのボタンを押してくださいと指示した。誰もが公共駐車場に停車するときにいつも行っている動作である。その日常的な出来事であるはずの中、場違いな我々の注視に明らかにうろたえながら彼女はボタンを押し、チケットを受け取り、駐車場の中に入っていった。すかさずオヤジは「これは普通の客。あんたはこうやってはいけないんだ」と改めて強調する。「もし受け取ったならば、あんたは余分な金を払う羽目になる。そして我々はその無駄な金を返却することはできない。なぜならばそれはあんたの間違いだからだ」これまた宣告するような口調である。そこで彼はすかさずもったいなげな動作でカードを機械にかざした。車止めのバーが問題なくするすると上がる。いいか、こうやってやるのだ、出るときも同じ。早くおわんねえかな、と心の中で思いながらも私は重大な事態にそなえるかのように深くうなずいた。しかし彼のおごそかな演説はさらに続いた。カードを友人に貸してはいけないこと、私は若いのだからなるべく階段から遠いところに駐車すべきであること(彼はこれを二回繰り返した)、タバコを吸わないことなどなど。
一連の注意事項が告げられ、いってよし、との最終宣言が下され、ようやく私は解放された。私は映画「Uターン」*1を思い出した。中西部の小さな町でわけのわからぬ粘着気質な車の修理工にはめられて、延々とその場を去ることができない、ショーン・ペン。空手の稽古にはかなりの遅刻となった。