シンガポール観光、食事

まともな観光らしきものをしたのは最終日の土曜日だけ。前述のフランス親父が、みるべきものはないが、植物園とアジア文明博物館だけはいっておくといい、というので、あまり観光をするつもりはなかったのだが、興味がでてきたので土曜の午後チェックアウトしたあとふらふらと歩いて植物園へ。
http://www.sbg.org.sg
事前になにも調べていかなかったのだが、入り口で案内のパンフレットをみつけ、19世紀半ばからある伝統ある植物園であることを知る。ヨーロッパによくある植物公園の雰囲気だが、生えている植物がなにしろ熱帯。気根や盤根はかつて屋久島でサルを追いかけていたときに見慣れているので懐かしいぐらいの感じだったのだが、なにしろ寄生植物が多く、一本の木がさまざまな植物に寄生されてそれだけで小宇宙のジャングルになっているような場面に出くわし、そのたくましさになんというか脱帽である。

思ったよりもかなり広大で南端から蘭園にたどりついたころにはかなりへとへと。金を払って中に入る前に偶然中曽根元帝国海軍主計少佐が寄贈した木をみかけた。なにかと東南アジアに縁の深い人である。

蘭園で奇怪なありえぬ色調の花々を眺め、温室あらぬ冷室を通過しながら、冷室とはここはやはり熱帯の植物園、などと熱気と湿気に少なからず朦朧としつつ公園中央部まで歩く。全部を見るのをあきらめ、そこからタクシーでアジア文明博物館へ。
http://www.acm.org.sg
特別展のひとつが、中国共産党のプロパガンダの特集。あまり展示品はなかったけど、おもしろかった。

インテリをつるし上げたことで有名な紅衛兵の腕章、話には聞いたが実物を見たのは初めてだった。

「大批判」とかかれた陶製の人形など、うちにひとつ置いておきたいほど文革感でいっぱい。赤木某氏にも勧めたいなあ。堂々たる労働者に比して文字どおりつるし上げられたプチブルはサイズまでプチ。わは。

もちろん、毛語録なども展示されていた。これはサンフランシスコの書店で見たことがあったようなないような。

ほかにもこんな絵本とか。

常設展示はかなり膨大で、東南アジア・南アジアの仏教美術を一同に眺めることができるので、インドの仏像が一番グラマーなどと私は思った。ほとんど客がいないので、シンガポールの雑踏に疲れた方々にはおすすめ。一室は貸切でたまたま結婚式をしていたので、着飾った若い人たちを眺めることができたのもよかった。
各国料理の集まるシンガポールだけにあちらこちら案内されていろいろ食ったが、結局感動したのはいずれも一人でいった台湾料理の鼎泰豐(ディンタイフォン)およびとんかつ屋とん吉。前者ではアホみたいに7品頼んだのだが、傑作は最初にでてきたセロリキューブのにんにく和え。なんでこんな微妙な味付けが可能なのだ、といまだに考えているのだが、なにか回答が出たら自分で作ってみようと思っている。

葱油かもしれないなあ。"酔った鴨"なる冷菜がこれまたうまかったが、輪をかけてレシピは不明。酒の味は確かにするが、酒蒸しってわけでもないみたいだし。
とんかつ屋伊勢丹の中にあり日本でもめったに食べることができないぐらい、上手に揚げられたとんかつ。すりゴマに和風ドレッシングをかけて食べる、という説明をしてくれたシンガポール人のおばちゃんが次々にキャベツの千切りを追加してくれるのがまたなんともよい雰囲気だった。店の名前は忘れてしまったが、ドイツ人に連れて行かれた和食の居酒屋で鯵がカウンターのケースに並んでいたんで刺身にしてもらったら実にうまかった。ほかの刺身はダメダメだったけど。ドイツ人の奥さんはタイ人で、小さな男の子がふたりいるのだが、いずれもジャニーズ系な美少年で、しばし一緒に遊んでのちに少々いじわるしたら、小さいほうが「もう遊んであげない」とむくれてしまい、その様子があまりにかわいいので私は柄にもなく相好を崩してしまった。
パラゴンというオーチャード通りにあるショッピングセンターの地下に入ったら、輸入された日本の食材が普通にずらっと並んでてオドロイタ。おもわずナメコと舞茸を買って帰ることにしてしまった。他にも寄せ豆腐だの、塩鮭、ちりめんじゃこ、云々云々、と日本のデパ地下と一緒である。HMVに行ったら「オリコンチャートで人気急上昇中!」とかで日本のアイドルのCDが並んでいるし、同じくオーチャード通り沿いにある高島屋紀伊国屋に入ったら、当然英語の本ばかりではあるがかなりの面積が日本語の本だった。日本軍のシンガポール攻略に関する本を二冊かって、飛行機に乗る前に腹ごしらえ、と思ってパネルを眺めたら地下には吉野家が。牛丼をかき込みながら、なんか東京のどこかににいるような気がしてならなかったのはあながち間違いではないかもしれない、と思った。