シンガポールの院生たち

シンガポールといえばフィンランドと並んで学生が優秀なことで有名だ。昨年に教えたフィンランドの院生たち、今教えているシンガポールの院生たちの共通点は、とてもおとなしいこと。普段EU諸国に一般的な行儀の悪い院生だのポスドクだのを教えているからかもしれないが、優秀とされる学生たちはあっけないほど素直で、どうもこちらの調子が外れてしまう。
シンガポールの学生はとても声が小さい人が多い。質問されてもなにを言っているのかよくわからないので、よく聞こえなかったのでもう一度お願いと聞きなおすと、ますます声が小さく早口になってしまう。ああ、緊張してしまったのだな、私の聞き方が悪いのだろうな、といじらしくなり、やさしくしないと怖がられてしまうと講義をすすめるうちになにやら子供を相手に教え諭しているような気分になってこれまたアカンのである。ガラの悪い高校から行儀のいい高校に転任した高校教師もこんな感じで調子がとれなくて困ってしまうのだろうか。
講義のあとに実習を行った。ちょっとおどろいたのは、人の説明をちゃんと聞き終えることなく手を出すので、途中で破綻をきたす院生続出。眺めていると、どの学生もとても焦ってはやく作業を終えなければ、と話を聞き終わらぬうちに競争のように作業を始めてしまう強迫的なところがその原因のようで、手直ししながら、さっきこういったじゃん、と説明すると、ああ、そうだったんですね、ごめんなさい、としばしものすごくすまながって、また猛烈な勢いでやり直す。ああ、彼らはこうやって競争社会を生き延びてきたんだなあ、と勝手におもったり。