福島原発の原子炉および使用済み燃料棒の冷却長期化

この数日ではっきりしたこと。楽観的なシナリオは冷却系が外部電源によって自動的に冷却されることである。しかし、いまだ冷却系の破損そのものの状況がわかっておらず、さらには漏洩する高濃度の放射線物質を含んだ水によって、修理の難度が高くなってしまった。なにしろ継続して人が故障部位に入ることができないのである。したがって、現状で想定される今後数ヶ月の、ありそうなシナリオは、原子炉や使用済み燃料棒を今のように水をながら手動で冷却し続ける、ということだ。一方、最悪のシナリオは溶融物による水蒸気爆発、最悪から二番目は、溶融物による地下水系、および海中の全面的な汚染だ。

いずれにしろ今後数ヶ月は放射性物質が漏れ続ける。冷却作業もさることながら、漏れ続ける放射性物質は大気および海中への拡散を免れ得ない。風向きによっては今のように各方面に流れ、局所的に空中の放射線濃度を上昇させる。人々は自分が住む地域の濃度をにらみながら日常を送ることになる*1。一日に空気中から被曝した量をおおよそ把握し、自らの被曝量を積算しながら暮らす、ということになる。同時に食事から接種される内部被曝の計算も行う必要がある。このことを考えると、被曝しつつ暮らす生活に必要になるのは

(1)測定点を細かくメッシュ状に設置して、リアルタイムで計測データにすべての人がアクセスできるようにする。このことで、放射能雲が発生した場合、ちょうどアメダスをみるように、風向と強度から退避すべきかどうか、といったことをそれぞれが自分で把握できるようになる。各地点における被曝量の積算値も測定値から計算し、つねにアップデートするようにする。また8時間程度の予報も常に公表する(この際、なんのために世界一速いスパコンが必要なのか考えよう)。

(2)カロリーを表示するように、販売される生鮮食品にはすべて放射線濃度を表示する。レストランはこれに基づいて各メニューに放射線濃度を表示する。年齢あるいは人生観によって自分がそれをたべてもいい、と思えるかどうかの判断の基準になるだろう。政府が設定する基準値は個人それぞれの健康という意味だけから決められているとは思えない。また、生鮮食品をムダに廃棄することがないように、ということでもある。たとえば、某都知事が基準値を超えた放射線濃度の水道水を自ら飲んでみせた、とのことであるが、年寄りがそれを飲んでみせても仕方がない。乳児にとっては同じ水でも健康に対する影響がまるでちがうのだから。

(3)乳幼児、妊婦は、福島原発を起点にして近いところにいるものから次々に疎開させるべきである。影響がおよぶ地域は天候などほとんど予測のつかないファクターばかりであるが、チェルノブイリで報告されている距離200キロ離れた地域の人々に対する影響を鑑みれば、東京もいずれまたその考慮に含まれることになるかもしれない*2。私としては、親と子供を引き離してでも子供を守れ、と思うが、この点は日本の文化的な背景も考えて議論されることになるだろう。疎開先がない場合は、疎開を受け入れている場所を探す。たとえばすでに次のような場所がある(@zkhiさんの情報より)。受け入れ先のリストは今後さらに長くなってゆくだろう。

日本国内

NPO河口湖自然楽校
http://news.workshopresort.com/article/190989220.html

神奈川県
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f100652/
(4月11日に確認したところすでに〆切)

石垣島
http://www.city.ishigaki.okinawa.jp/support/sub_page_2.html

那覇市
http://www.oiyh.org/jigyo/shinsai/index.htm
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-174964-storytopic-232.html

他に震災ホームステイプロジェクト
http://www.shinsai-homestay.jp/

ドイツ

ベルリン・オープンホームプロジェクト
http://www.love4japan.com/
シュピーゲルに掲載されている上の団体に関する記事。

ドイツで里親になる希望者がたくさんいる、という話。
http://www.merkur-online.de/lokales/wolfratshausen/iruma-hilfe-familien-wuerden-kinder-aufnehmen-1164925.html

スポーツ連盟が日本の子供達を招待。
http://www.fukuishimbun.co.jp/nationalnews/CN/sports/428083.html

*1:異なる例なのであまり参考にならないかもしれないが、オーストラリアには紫外線警報なるものがあって、日々どのぐらいの紫外線の量かということがテレビで広報される。多いと人はなるべく家に閉じこもる。

*2:Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment(2009)を参照すべし。