1996年頃
院生のころネットに載せたおちゃらけ文章が出てきたんで掲載。
ロング・インタビュー
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なぜ、三浦氏はシャツを燃したのか。
インタビューアー・冬木
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F:シャツを燃すのが趣味なわけ?
M:いや、そーゆーわけじゃないんだけど。あのときはたまたま。というか、ある程度、必然的ではあったと思うんだけど。
F:必然的っていうと。
M:久しぶりに svnseedsにあった日だったし、IとかKとか荒くれな人間がいたしなあ。 山河でさんざん真露飲んだあとだったし。 真露はすげー酒だよ。つるつる飲んで、うまいよこれ、とかいってると腰くだけるからなあ。
F:ようはメンバーと、酒っつーことかなあ。
M:それだけじゃなくて、ミヒャエル・エンデが死んだことも関係しててさ。
F:へえー。
M:ミヒャエル・エンデは物欲が全くなくて、結局自分の肉体に対する未練もなくなって、死ぬ瞬間まで精神としての自分の存在を死とは無関係に信じていた、という話が、エンデが死んだときに新聞に載っててさ。その病院の医者が、死に際にこれほど精神不安定にならない人は珍しいってコメントしてた。単純に衝撃受けてね。
F:それって、霊体とか幽体とかいうやつ?
M:いや、ちがう。精神は死なず、というもちょっと理性的な話しだと思うけど。
F:そら、まあ、「モモ」とか「自由の牢獄」とか本はいってみれば精神だよな。
M:そうそう。そんな意味での精神。
F:で、なんで、服燃しちゃうわけ?
M:いやさ、物欲を滅却しようと思って。
F:燃すのが、服である必要、ないんじゃない。
M:うー。そりゃそうなんだけど。その説明はまた別にあってさ。
F:うん。
M:今の世の中で、精神と肉体って、ひとりの人間として同義じゃない。
F:そら、まあ、科学的にはそうだな。
M:それで、外界と人間はヒフ一枚で分断されているわけでしょ。
F:うん。分断っていうか、ヒフの内側が個人だよな。
M:それがいやでさ。
F:....いやっていわれても困るけど。
M:服もその外界と個人の分断を補強するでしょ。要するに近代的な自我の補強。
F:そうだな。
M:その、分断をあいまいにしたくてね。
F:いやー。ますますわからん。そりゃ、裸になる、っていうこと?結局。
M:いや、それだけじゃすまない。
F:どうするとすむわけ?
M:例を挙げるしかないけどさ、ダンサーって個人の肉体と外界の領域があいまいだと思うんだよね。ヒフではなくてダンスする運動そのものがその人の肉体の領域になるでしょ。つまりダンスしている人のまわりの空間もその人の一部になる。
F:うーん。確かにダンスしている人からはオーラがでてるみたいな感じはするな。
M:オーラじゃなくて、個人の縄張りの拡張みたいな。踊っている本人がいちばんその事感じるんだろうけど。肉体の境界が、ヒフの表面から逸脱するんだと思う。
F:もうちょっとわかりやすい例はないの。
M:そうだな。うーん。「パルプフィクション」見た?
F:みたみた。
M:あれにさ、ブルース・ウィリスがWASPに監禁されるシーンあるけどおぼえてる?
F:なんとなく。
M:そこにさ、体全体を包む黒いバックスキンのスーツ着させられて、鎖つけられて「犬」とか呼ばれてる奴が登場するでしょ。
F:知ってる知ってる(笑)。言葉もしゃべんないだよな。顔もレザーで覆われててね。ロバート・メイプルソープの写真でもあった。
M:あれってさ、レザースーツとかいって、一種のSMらしいんだけど、想像するに皮膚の表面がもう一枚のヒフでぴったりと覆われるわけでしょ。そうすると感覚的には自分がヒフの外側にあるみたいな感じがすると思うんだよな。外側の外側は内側、ってことだけど。
F:うん。何となく感覚的にはわかる。
M:あれも、個人をその境界としてのヒフからずらすことの一種だと思うんだよな。
F:要するにあそこまでいくわけ?
M:いや、そういうわけじゃなくて。服の極端なイメージだと思うんだよね。あれが。服はぴったりしてないし革のような質量感がないからわかりにくい。
F:なるほどね。それで、服を燃したと。
M:まあ、何となくそんな感じ。
F:で、あの日はさらに盛り上がって、服もすだけでなく、部屋の壁に穴あいたとか。
M:ああ。それは、個人空間を逸脱させることになるわけで....
F:あーもう、わかった。ようするに酔っぱらうのはいろいろ逸脱だと。
M:いや、それではまとめすぎ。
F:まあ、そうゆうことで。インタビューおこたえありがとうございました。
M:いえいえ。どうも。 ありがとうございました。えっと、つけくわえると、「タイであんまり暑くてヒフがあいまいになった」という話しもしたいんだけど。
F:じゃまた、次回(苦笑)。