近況

私の子供を産んだ人は今危篤にある。クモ膜下出血発症後、なんどか軽微な血管れん縮(vaso spasms)を起こしたが、11日目にして右脳全体にわたるれん縮が起こり、大きな浮腫もみられる。脳圧が高まって薬学的な対応が不可能になったので、減圧開頭法なる過激な手術を三日前におこなった。理屈は単純で、該当脳半球の頭蓋骨を除き、圧力を物理的に開放させる、という方法である。一時的にこれは小康状態をもたらしたが、1日後にふたたび膨張がはじまった。発病直後より継続してきた血圧を上昇させて脳に酸素を行き渡らせる処置ももはや無駄ではないか、と思われるほどに左脳、脳幹が圧迫され、瞳孔反射も左右で異なるようになっており、脳ヘルニアが始まっている兆候とのことだ。家族を呼んでください、と医者に告げられた。ドイツの脳死と死亡判定の関係についてよくしらなかったのだが、脳死は即そのまま死亡ということになるらしい。医者がそのようなことをいっていて、ちょっと混乱した。まわりのドイツ人にしてもよく知らない、という役たたずの科学者ばかりである。日本と死の定義をめぐる事情が違うというのはあちらこちらで聞いているが、このあたり詳しい方がいたら簡潔にコメントしていただけるとありがたいです。