プロとガチンコ

id:svnseedsの最近の記事におもしろいコメントがあった。彼の書いた内容が「ワタクシの書いた論文の内容の一部にこの記事は酷似しており、リファーするかどうにかしろ、さもないと告訴も辞さず」とのことで、プロの方からコメントがあったのである。はたからみれば、ネットに載っているデータでなにごとかの相関関係を考察する行為なのだからその材料でなにを料理しようが勝手だ、と思うのだがそう思わない人もいるらしい。プライオリティが問題になるようなトピックなのかな、そもそもこれって。なお、コメントしたプロの方はすごい勢いでsvnseedsの足りない点を指摘していて、下手な大学に授業料はらうより勉強になるだろうという状況である。
なんて思うこともいろいろあるのだが、実はこれは私の関連する分野のこれからのプロとアマの関係を考える上でもなかなか興味深い現象である。というのも”ゲノムプロジェクト”と称してさまざまなモデル生物の遺伝子やたんぱく質の情報がネット上にゴロゴロただでころがっている。こうしたデジタル化されたデータを利用して、そこからなんらかの傾向や生物システムのありかたを考察するプロの情報学者などがこれまたどんどん増えてきているのだが、あまり深く考えるまでもなくこの「データをダウンロードする」部分は誰にでもできることだ。プロの研究者はクラスターなんぞをつかい、複雑なモデルをデザインしてすさまじい量の計算をするけれど、アマチュアが家の古いPCをいくつか並列化して気長にいろいろ計算してプロットする、なんてことも可能なわけだ。でも、「その解析すでにやっているからネットでパブリッシュせんでくれ」とはいわないだろうなあ。むしろ結果を比較して再現性がある、ないしは別の角度からも似たような結論が、ということでそうしたアマチュアの趣味を推奨するのではないか。
そもそもアマチュアのそうした趣味の研究のほうが、プロの研究よりも信頼できるんじゃないか、という気さえする。データ捏造のニュースをよく耳にするけれど*1そうした生活と昇進欲に駆られた行為はアマチュアであれば想定しにくいからである。あ、名誉欲はあるか。でもそれだけである。ともかくもそんなわけで、趣味のバイオインフォマティックス、みなさんも自宅でいかがでしょうか。

*1:そういえば、先日うちの研究所で講演したNature Cell Biologyの編集長がすごいこといっていた。100人分の患者のデータを捏造した医者がいたそうである。