「いいかんじ」

生物学の中に構造生物学という分野がある。原子レベルの解像度でタンパク質の立体構造を同定することから、超分子構造をトモグラフィーで再構成する中程度の解像度の同定までを含む分野なのだが、これまでほとんどその内情をしることはなかった。私が扱っているのはもう少しマクロなレベルだからである。このところ構造生物学の人たちといろいろ喋っていたのだが、X線で構造解析、みたいな当初のイメージがかなり崩れた。電子顕微鏡の50オングストローム程度の解像度の画像を使ってかなりのことが判明するようになってきているのである。特にすごいなあ、と思ったのはこうした電子顕微鏡レベルでの超分子構造の同定を、細胞レベルでのタンパク質局在にまで結びつけることが可能になってきている、という点である。この作業は具体的には画像のフィッティング、ということになる。話をききながら、フィッティングは自動的にできるよなあ、と思ったのだが、その実かなりの部分が手作業であるという。というのもさまざまな情報、すなわち屈曲の自由度、などを勘案しながらフィッティングが論理的に正しいかどうか、という判断をしなければならないからで、結局「いいかんじ」なのが大切だという。どこぞの学部生がいうことばならば、アホか、ということになるが、その道のトップの人間がそんなことをいうのだから、まず間違いはない。