腐乳マニア

この間の冬の日本で、豆乳鍋なる私にとっては未知な料理がとてもあたりまえな顔をしてメニューに登場しているのにちょっとおどろいて、以来日本で今どの食材が一般的でなにが一般的ではないのか、その知識に自信がまったくない。私が日本を出た90年代半ば頃にはモッツォレッラチーズがスーパーで買えるなんて考えられなかったが、今時は普通にスーパーで売っているという。逆に考えると、ドイツのスーパーで最近はシイタケが普通に売っているし、アジア食品屋の品揃えもよくなって、エノキダケなども並んでいたりする。以前は苦労して自分で作っていためんつゆも、この2-3年濃縮めんつゆが入るようになったので、そうめんを食べるのも気軽になった。食材の国際化が相互に起こっているのだろう。そんなわけで、最近は日本でも普通に腐乳を使って料理するのだろうか、と思ったりする。どうなのだろう。私は周期的に腐乳狂いになって、しばらくするとぱたりと食べなくなる。なにか特別なミネラルが入っているのかな。

空芯菜の腐乳炒め
空芯菜の中に入り込んだ腐乳スープがたまらない味の炒め物。マカロニの中空部分にソースが入り込む悦びとよく似ている。香港系のレストランで食べて以来、自分で勝手に作っているのだが、極めて簡単で菜を炒めた後に四川腐乳とごま油のあわせ調味料を入れるだけ。あわせ調味料の構成にいろいろ凝ってみたが、腐乳の力が強いので素直にそれだけの方がよい、という結論に至った。

鶏ハツの腐乳炒め
これは台湾料理の鶏ハツ・バジル炒めから派生して考案した料理。老酒の下味をつけた鶏ハツを先に炒めて取り出し、再度鍋を熱して玉子・ニンニク・バジル大量の順に炒め、鶏ハツを加えたらすぐに上記と同じ腐乳合わせ調味料を加える。ハツと腐乳が合うのに加えて、バジルが負けずに対応する。夏向きの料理。

これは腐乳とは関係ないのだが、週末帰省していたノルマンディフランス人が鯛一尾、平目二枚、カレイ一枚をアイスボックスに入れて帰ってきた。ノルマンディでやったみたいに刺身にしてくれというので、夜の10時からさばきはじめて11時から7人集まって刺身およびカレイの煮魚。魚好きの人間はどこの国の人間でも和風な煮魚に大喜びする。それにしても久しぶりに家で食べる鯛の刺身はあまりにおいしく、イタリア人フランス人もうまいうまいと食っていたが、自分で造ったのにもかかわらず、一番感動していたのは私だった。