アチェ州・政治及び歴史的背景など

アチェは、独立派ゲリラとインドネシア国軍の和平交渉が破綻に終わった2003年5月から、軍事戒厳令、非常事態が布かれており、すでに多くの人権侵害の犠牲者や域内避難民が出ています。今回の地震により、その状況はさらに厳しくなっています。また、軍事作戦下にあるアチェでは、海外NGOの入域が厳しく制限され、今回も地震の犠牲者が孤立することが大いに危惧されます。
スマトラ島沖地震:アチェの被害者への緊急カンパのお願い

ところで震源地の近くにはアチェがある。そう、東チモールと並ぶインドネシアの「火薬庫」。周知の通り東チモール沖には天然ガスが眠っており、エクソンとオーストラリア政府がその開発の中心である。もちろん、彼の地に自衛隊をPKO部隊を派遣した日本にとっても重要なエネルギー源産出地であって、東京ガス東京電力天然ガス田の開発に参画している。しかし、その東チモール沖を上回るとされる天然ガスが、このアチェには眠っている。
アチェで産出される天然ガスの恩恵は、当然のようにジャカルタがさらって行く。だからアチェの人々はインドネシアからの独立を要求するようになり、それを阻止するインドネシア政府との間で激しい戦闘が繰り広げられてきた。東チモールが周辺地域の圧力によって独立した現在、インドネシア政府がアチェ独立を認める可能性はゼロに近い。
こんな時にこんなことを書くのは非常識かもしれないが、「復興」の名の下にインドネシア政府がアチェに対する「支配」を強固にしていくかもしれない。住宅の供給ということで別の地域への以上を促進したり、防災機能の向上ということで進駐させるインドネシア軍の規模を拡大するかもしれない。そこんところは注意が必要やな。
「復興」と「支配」
T's Home 日記 04年12月27日付

アチェは、スマトラ島北部地域を指し、イスラム教徒が大半を占めるインドネシアの中でも厳格なイスラム教徒が多いことで知られている。アチェは、地政学的な位置関係的にも古くから交易で栄えた経済的先進地域であると同時に、イスラム教の先進地域であり、オランダによる植民地支配以前には高い文化水準を備えた地方だった
オランダ及び日本の植民地支配を経て、アチェ独立運動派はインドネシア建国の父であるスカルノらを援助したが、インドネシアの独立と共に彼らは裏切られ、一転して弾圧を受ける側になる。ソノ傾向が強まるのは、アチェに存在する豊富な天然ガス資源であり、インドネシア国営石油公社とエクソン・モービルによって開発されたアチェ天然ガスは、大半が日本に供給されている
石油資源に限った話ではないが、インドネシアの経済構造は原則的に、資源利権を華人系財閥が独占し、軍や官僚と強く結びついた国有企業が華人系財閥に利益誘導を行うことで癒着している。さらに、華人系財閥は日本やアメリカの大手企業と提携する形で資源や市場利権を供給することで利益を上げており、腐敗度の高いインドネシア経済は現実的には日本とアメリカの経済的搾取の対象となっている。その原動力がODAである
前世紀まで東南アジアの先進地域だったアチェが、独立運動の弾圧と石油資源の搾取によって、インドネシアの中でも後進地域の一つに数えられるようになって久しい。アチェに限った話ではないが、外島のインフラ整備は本島に比べ著しく遅れており、また住民の大半が漁業に従事しているため沿岸部の居住人口も多い。こういった状況下で津波が襲った
最悪なのは、このアチェの独立闘争を指揮している反政府武装組織自由アチェ運動と、インドネシア国軍との間は現在も交戦状態であるという点だ。インドネシア政府は、停戦を発表しているが、実際には停戦には至っていない。スハルト政権崩壊後のインドネシアでは、国軍の軍閥化の傾向が著しく、中央の命令を地元の軍が守るとは限らないという状況がある
von_yosukeyan の日記 (3718) *1

日本ではマレーシアやタイの観光地の映像がほとんどらしいので、現時点ですでに8万人の死者がでているといわれるアチェについて少し情報を提供しておくべきだと思って書いている。(以下続き アチェ:想像力を持つために(1)

*1:id:torly:20050101#1104589063経由