テキサステックの微生物学研究者、トーマス・バトラーが、ペスト菌をその詳細を但し書きをせずにタンザニアに送付した、との咎で有罪判決[ネイチャーアップデート]。査察の結果、製薬会社から裏金をもらっていた、などなど、郵送さえ発覚しなければでてこなかった余罪がずらずらとでて、懲役ないしは高額の保釈金を払う必要があるのだとか。バトラーは破産か懲役か、ということになっているという。

6月の元記事を読んでみると、そもそもはタンザニアから米国にペスト菌を旅客機で密輸しようとして捕まった、とのことである。上の記事からするとこの件での疑いは晴れたのだろう。しかしバイオテロ防止のために厳しくなった空港での検査を避けるために、米国研究者による密輸が増えていることは事実らしい。確かに共同研究をしたりしている場合、そうでもしなければ通関に時間がかかってしまって、サンプルは死ぬは、他の研究者に追い越されるはでたまったものではない。特に厳しいのがロシアの元バイオウェポン研究者との共同研究なのだそうだ。一方で、米国は対バイオウェポンの研究をする研究者が増えており、これらのロシアの元バイオウェポン研究者との共同研究が必要なので、米国はジレンマに陥っている。ロシアの方にしても、エイズ結核に対処するために米国との共同研究が必要なのだが、これも厳しい取り締まりの対象になる。

有害ではない生物の場合、封筒に培地に育っているプラスチックのぺトリ皿をそのまま入れたり、乱暴にも胞子を便箋になすりつけたりして送ることがある(送られた方は回収するのが面倒だ)。あるいは、cDNA断片を濾紙に染み込ませて、封筒に放り込んで共同研究者に送ったりする。バトラーの場合、ペスト菌だけに、フェデックスの袋に放り込んで送るのはちょっと無神経だよな、と私も思うが、これを機に、無害な生物サンプルに関しても米国の締め付けが厳しくなるのかと思うと、ヤレヤレ、という気分になる。