母校の学部4年生向けセミナーで講義。1年半ほどかかわった共同研究の話をした。

実に激しい競争が起きている分野だったので、それを目の当たりにしてなおかつ巻き込まれた経験は私にとって面白くはあったが辟易する場面もかなりあったりした。なにしろ、プロジェクトの立ち上げにかかわり論文に名前が入ることが最初から決定していた元院生がその後競争相手のラボのポスドクになって論文の結論に反旗を翻す一方、また別の研究室が真っ向から対立するデータを出し、さらに私自身の解析は、どちらかというと敵方に組するような結果となった、というような錯綜する状況で、論文の落としどころは極めて困難な状況になった。さらにネイチャーやサイエンスの編集者との終わりなきバトル(電話とか、アポなし学会突撃などである)まで延焼し、結局対立点をすり合わせながらギリギリの合意点に到達、という論文になった。科学はそうやって仮説を戦わせながらすすんでいく、といえばそれまでなのだが、悠長に議論しているわけではなく、ウチもソトも気分は戦争。政治的状況、タイミングを睨みながらの議論でもある。コンペティションをゲームとして楽しめる人ならばいいんだろうけれど、私はそうではない。研究内容だけ楽しめればいいのになあ、とほとほと思った。一度など実際、かなりあとの段階になってからプロジェクト、すなわち論文から身を引きたい、とまで申し出たのである。

そんなわけで、近年の生物の最先端分野での競争はどんなにドロドロしているのか、というような雑談をちょろっとするつもりが、研究内容そのもの並みに複雑な共同状況を説明するのに、かなり時間を占めてしまった。そうした裏事情的な話を学部生がきくことはあまりないだろうけれど、はたしてよかったのだろうか、などと車で実家に預けた無珍先生をピックアップしに帰る道すがら、思ったりした。

食事記録

ししゃも、ゆばさしみ、いくらしょうゆ漬け、白菜浅漬け。マグロのカルパッチョ、てんぷら盛り合わせ、揚げ出しなす、とうふ、ざるそば。ビール生中二杯、お酒1合。蕎麦屋だったので、そばに合う酒、と頼んだのだが、なんの酒なのか聞くのを忘れてしまった。無珍先生は肉まんふたつをぺろりと平らげたのでびっくりした。実家でもかなりの大食いだったそうである。