廃墟の中で

子供だった男の子のころ町の中にある誰も住んでいない家に入り込んで探検したこと。廃墟の中には空になった一升瓶、布団のない掘りごたつ、死人のような枕の中身、ものすごく汚い金かくし、使い古されてぎざぎざになった箒。畳が上げられてむき出しになった板間、打ち捨てられた神棚、埃が指でなぞれば溝になるほどたまった雑誌の束、かび臭い風呂場、蛇口を開けてもなにもでてこない錆びかけた流し、くたくたになってクモの巣が張っている雪駄、はがれかけたNHKの受信シール、観音開きのテレビ。洋式便所はなぜかかならず横向きに転がっている。町田町蔵の大仏はめったにないのだけど、なぜかアイヌ彫りの熊はどこの廃墟にも鎮座していた。ほとんどかならず。ブラウン管を誰が一番に割れるか、と石をなげて、”パン”と割れる瞬間にぼくらはとびのいて大喜びした。石じゃだめだった。コンクリの塊。でもたぶん私は今廃墟の側にあるのであって、その廃墟の側から、廃墟の向こう側で、にこにこ、うにうに、うにゃうにゃ、ひにゃひにゃ、うへえ、とつぶやく男の子の面倒を見ている。

科学者は脳みそのいかれたノーベル賞学者の国家主義を信じるべからず。おのれの科学を信じよ。
政治家は国家を超えよ。
学生も国家を超えよ。
自称批評家はDJになれ。
DJは宗教を決してはじめてはいけない。
経済学者は世界を経世せよ。国家ならず。
医者は命を救え。国家ならず。
弁護士は弁の無き者を護れ。国家ならず。
技術者は医者になれ。国家ならず。
社会学者は文学者になれ。
哲学者は数学せよ。
私は国家を超える。