花水木

花水木は合州国バージニア州の州花だ。枝を折るとほとばしるほどに水が滴るということからそのような和名になったという。東部ではよく見かける花で、可憐ながらゴージャスなそのさまは私にとって鉄砲百合によくにている。英語ではDog Woodなるなにが由来なのかわからない名前がついているのだが、花水木の花が咲き乱れる様子は実に美しい。大きな紋白蝶が方々で羽を休めているような光景だ。日本やドイツではあまり見かけることがないが、通りすがりに見かけるたびに、ああ、アメリカの花だ、と中学生のころを思い出す。思わず昔ように葉をちぎって、この木に特有な葉脈の糸をひく粘液を確かめたいな、という衝動さえ生じる。このときに感じるなにかをもう失ってしまったのだという一瞬のセンチメンタルな気分は、桜にもある。ソメイヨシノの絢爛さとはまったく違うがそれでも桜は桜であるドイツの桜を眺めた時の一瞬の気分に似ている。学生のころ、ほっつきあるいて二日酔いの目にまぶしかった桜はそこにはない。でも思わずその貧弱な桜の木の下でなにがなんでも一升瓶を抱えたくなる。・・・などということを下の動画の最初に出てくるエピソードを眺めながら思い出した。

一青窈ハナミズキ
http://www.youtube.com/watch?v=qeHvcD6ehH0