近い将来

ルモンド・ディプロマティークの編集長による安倍晋三の評価。内容は簡潔にまとまっている。ポイントは、北朝鮮への強硬姿勢で売りだした三代目超タカ派にして親米追従のこの首相をもってして、東アジアの緊張状態は高まらざるをえないであろう、としている。

北朝鮮に対するより強硬な姿勢とさらなる制裁措置が必要であると声を上げたが、そこに大衆扇動的な面がなかったわけではない。蔑視的な反朝感情に訴え、多くのメディアがそれに追随した。このようにして安倍氏は支持を得た。
(中略)
安倍氏がソウルに到着した10月9日に北朝鮮が非難されるべき核実験を行ったのは、彼らが日本の新首相をどれほど危険視しているかを知らせるために違いない。この無責任な警告は、全世界に不安を持って受けとめられた。と同時に、この事件は、安倍氏がそのナショナリズム路線を変更しない限り(考えにくいことではある)、北東アジアの緊張はほとんど解消されないだろうことを物語っている。

これが世界の評価なのだよな。このところの一連の愛国パッケージに関しても今後それなりに報道がなされて”国家主義に傾斜する日本”という認識はますます広まるだろう。なおこの記事に対して”反日メディア”と騒ぐ連中はまだ見かけていない。でもでるんだろうなあ。
教育基本法改定の審議とかを読んでいると「国際的な人間になるにはまず祖国を愛することです。これが世界の常識」なんて短期留学でよほどひどい目にあったのか悔恨まじりの人生訓がまことしやかに説かれ、さらには法制化される状況である。これに力を得た「日本は潔白にしてムジツ、日本はウツクシイ、日本には四季がある!」などと連呼するイナゴが”国際人”とばかりに海外のブログに出かけていってところかまわず一見理屈っぽいものの要するに「日本はすばらしいのです」という英語のテンプレを押し売りしまくるようになる未来も近いのだろう。なにしろ改定憲法と改定教育基本法のお墨付きなのだから。
さらに想像をめぐらせれば、その先で反論され、反論されたイナゴはその批判の意味が良く分からないが(なにしろ国家の批判という議論を体験することがこれから日本ではどんどん減るのである)、否定されたことだけは感じる。かくして、「反日なのですね」という感想を胸に「世界は日本の敵、反日だらけ」という思いを少しづつ深め、よりいっそう憂国と愛国の思いを募らせるのである。この再帰的な愛国感情の増幅を墓穴堀りといわずしてなんといえばよいのか私にはわからない。孤立と愛国のダウンスパイラル。すくなくともそれが政府の大好きな「国際化への対応」とはいえないことは、先日触れたたった一人の中国人留学生の反論にはまともにこたえられぬ一方で、東アジアの危機に日本を憂い武装化を推進する松下政経塾同窓の議員を参照すれば明白であろう。利権出世はともかくも彼らの心の中もまたおそらく「反日なのですね」のダウンスパイラルとそうたがわないということなのだ。