キャリアパス

高校生に「サイエンティストにどうやってなるのか」という話をしてくれという要望が舞い込んできた。うちの研究所にはパブリックリレーションということで、高校生や高校教員、大学生向けの企画を次々にうちだすセクションがあるのでそんな仕事も頼まれるのである。私がお手本となるべき科学者であるから、ということではもちろんない。日本人の高校生もやってくるから、ということらしい。
正直言えばやりたいことしてたらいつのまにか科学者になってました、ということになる。私のように積極的に人生設計をしないで科学者になるタイプ、というのは結構多いのである。あー、おもしろーい、とウツツを抜かしているうちにいつのまにか低賃金、長時間労働超流動性の学術市場にたゆたう結果になっただけなのである。科学者になることを薦めるのは、「スバラシイ職業ですよお」というよりも、「覚悟しなさい」ということだと思う。ウツツを抜かすにはそれなりの耐性ないしは楽天性が必要なのであり、それがなければ狂うか転職かである。
したがって、お手本になるようなキャリアパスを説明することができない。ましてや4行教授なんてことがこの数年でやっと批判され始めたという状況の日本の学生に対しては、お手本というよりも他山の石になるしかないのである。・・なんて思っていたら、それを見越しているのかパブリックリレーションの人が「研究者への道・国際的なキャリア編」なるプロモーションDVDを押し付けてきた。英語・フランス語・ドイツ語で編集してある。いかにしてすばらしい国際級科学者になるのか、が懇切丁寧に説明されている。へー、と口半開きで眺めながら私は思う。早くこれ見りゃよかった。