鶏のシードル煮込みノルマンディ風

鶏一羽・バター・シードル・パセリ・タイム・塩コショウ
スコットランド人がノルマンディの友人を訪ねて、シードル(リンゴサイダー)の仕込を手伝ってきた。赤ワインとシードルそれぞれ5リットルを伴って帰ってきたので、ノルマンディ夕食となった。ここぞとばかりにノルマンディフランス人が料理したのが、上記。寒い冬にぴったりの旨さだった。
ノルマンディといえばシードル、なのだそうである。ノルマンディフランス人がときどき土産に持ってくるシードルを初めて飲んだときには、これまで私が知っているシードルとあまりに味が違うので驚いた。うまいのである。樽の馥郁たる香りと、ほんの僅かな甘さとアルコール。脂の多い料理によく合う。バターを大量に使う鶏のシードル煮込みとはもちろんばっちりの相性だった。ちなみにシードルを蒸留させると、これまたノルマンディ名物であるカルヴァドスになる。
食後にスコットランド人が撮影してきたシードル作成風景のビデオを眺めた。まずリンゴをより分け、水でじゃぶじゃぶと洗う。巨大な漏斗の側面に歯車を回すための大きな輪が二つついた年代物のリンゴ破砕機、でリンゴをこなごなに粉砕し、それをこれまた年代物の圧搾機にかけてジュースを搾り取る。圧搾機は手動の版画プレス器に似た機構で、巨大なネジをそれにとりつけられた櫓のような長い棒を漕ぐようにして少しずつ回して圧をかける仕組みである。破砕機の両輪を興奮気味の小さな子供が二人がかりで回し、お父さんが黙々と破砕されたリンゴを圧搾機に放り込む。10代前半と思われる息子が一生懸命圧搾機の櫓を漕いでいた。家族総動員で仕込みをしている様子はどこか餅つきを思い起こさせた。ジュースは樽に詰められ地下室に運ばれる。そのまま発酵、4週間ほどで出来上がるそうで、材料はリンゴ以外なにも使用しないのだそうだ。