俺達を爆撃しないでくれ.com

2004年4月、ホワイトハウスでのブッシューブレア会談の極秘メモをデイリー・ミラーが05年11月22日付ですっぱ抜き、以降、”アルジャジーラを爆撃しろ”というブッシュの発言が問題になっている。経緯をレポートする記事をいくつかまず引用。
ブッシュ大統領、アルジャジーラ爆撃を計画=英首相との極秘会談メモ

 「アルジャジーラ爆撃計画」は、2004年4月にブレア首相がワシントンを訪問した際に行われた両国首脳会談で言及された。流出した機密文書は5ページに上る会談メモで、ブッシュ大統領はドーハにあるアルジャジーラ本社に空爆を加えたい考えを口にした。
 これに対しブレア首相は、カタールはアラブの友好国である上に、アルジャジーラ本社は商業施設の林立するドーハ中心部にあり、爆撃すれば報復の連鎖が起きると難色を示し、思いとどまるようブッシュ大統領を説得したという。

もうすこし詳しい解説が以下のリンク及び引用。北米在住のジャーナリストの方のブログ"IPSO FACTO"より。ブッシュ大統領、アル・ジャジーラ爆撃を計画か?

1996年に放送を開始したアル・ジャジーラアルカイダのビデオメッセージを頻繁に放送することでも知られ、2003年のイラク戦争アメリカの同盟国でもあったカタールのドーハに放送局がある。ミラー紙は複数の人物から情報を入手しているが、情報源となった人物の間でもアル・ジャジーラ爆撃の真意について意見が分かれているとの事だ。情報源の1人は、両首脳が「ふざけあって」アル・ジャジーラ爆撃を語っていただけとミラー紙に語っており、別の人物は「ブッシュもブレアも深刻に話し込んでいた」とコメントしている。ワシントンで会談が行われる直前、イラクファルージャでは武装勢力との戦闘によって米海兵隊員30人が死亡しており、ブッシュ政権閣僚メンバーも以前からアル・ジャジーラを激しく批判していた。BBCのポール・レイノルズ記者は米軍の中東方面司令部が置かれているカタールを爆撃する可能性はあり得ないとして、仮に発言そのものが実際に行われていたとしても、ブッシュ大統領流の「ジョーク」だったのではと分析している。

冗談ですむはずがないよなー、という感覚は、当時細かくイラク関連のニュースをフォローしていた人間ならばすぐ思うことで、たとえば次のフィスクの記事"Is there some element in the US military that wants to take out journalists? (09 April 2003, Independent)"を参照にすればいい。apoさん(id:mangamegamondo)のサイトに邦訳がある。'アメリカ軍はジャーナリストを殺したがっているのか'。少しだけ引用。

昨日の現地時間午前7時45分、アメリカ軍のジェット機アルジャジーラを爆撃するために旋回した。テレビ局のバグダッド支局の主任特派員でヨルダン系パレスチナ人のターレク・アイユーブは第二カメラマンのズヘアという名のイラク人とともに、屋上で支局近くでのアメリカ軍とイラク軍との激戦をレポート中だった。アイユーブ氏の同僚マハー・アブドラは、両者ともその後でビルに急降下するようにロケット弾を発射したのを見たのを覚えている。そこは2台のアメリカ軍の戦車がちょうどジャミハラ橋の上に姿を現したすぐ傍の建物だ。
「画面にはこの戦闘が映っていた。弾丸が飛ぶのが見えて、それから戦闘機の音が聞こえた」とアブドラ氏は語っている。
「戦闘機は非常に低空で飛行しており、階下にいたわれわれは屋上に着陸するのではないかと思ったほどだ。それほど近かった。われわれは実際にロケットが発射された音を聞いた。直撃だった。このミサイルは実際に発電機を爆破したのだ。タリクはほぼ即死だった。ズヘアは負傷した」
(中略)
しかし、さらに憂慮すべきなのは、戦争の実況中継でアメリカとイラクの双方から激しい怒りを買ってきたアラブのテレビ局で最も自由なアルジャジーラ・ネットワークが、2か月前にバグダッドの自分たちの支局の座標をペンタゴンに伝えており、支局は攻撃されないという保証を受け取っていたという事実だ。
月曜には、ドーハのアメリ国務省のスポークスマンでアラブ系アメリカ人ナビル・コーリが市内のアルジャジーラの事務所を訪れた。そしてカタールの衛星放送の内部情報によれば、彼はペンタゴンの保証について繰り返していたという。それから24時間以内にアメリカはバグダッド支局をミサイルで砲撃したのだ。

フィスクは極秘メモの暴露を受け、05年11月26日付のインディペンデントの記事で、フシギなことがあろうものか、と当時を再び振り返っている。'No wonder al-Jazeera was a target。'

So what was so strange about George Bush’s desire to bomb al-Jazeera in 2004? That Lord Blair of Kut al-Amara - the man who supposedly persuaded the American president to desist from this latest insanity - should now threaten the British press under the Official Secrets Act lest they divulge the entire can of worms is quite in keeping with the arrogance of power which we now associate with the Bush-Blair alliance. British ministers cravenly repeated America’s lies when US aircraft killed the innocent in Baghdad in 2003 and they will happily cover up Bush’s continued desire to bomb his supposed enemies, however innocent they may be.

ブログ"IPSO FACTO"より続いて引用。

しかし、両首脳の発言を記録したメモが外部に持ち出されていたのは事実で、英当局は内閣府に勤務するデービッド・キーオ氏を告訴している。キーオ氏はメモをトニー・クラーク元議員の元で働いていたレオ・オコナー氏に渡した容疑がかけられており、2人は来週ロンドンの下級判事裁判所に出廷する予定だ。ミラー紙の報道によると、メモには「最高機密」のスタンプが押されており、ドーハのビジネス街にあるアル・ジャージーラ本部をどのように攻撃するのか詳細に語ったブッシュ大統領に対し、攻撃に反対するブレア首相が説得する様子が記録されているとの事。キーオとオコナーの両氏がミラー側と接触していたかについては、明らかになっていない。英政府は22日午後にAP通信の取材に答え、機密情報漏洩問題とミラー紙の報道内容について現在は何もコメントできないとしている。「もし今回の報道が事実だとすれば、我々だけではなく世界中の報道機関にとってショッキングな出来事です」、同じ日にアル・ジャジーラも声明を発表している。

呼応して、アル・ジャジーラのスタッフが中心となってDon't Bomb Usなるウェブサイトも登場。代表も論説をガーディアンに発表している。

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「破壊」と「死」を想像し続けるということ