フランスの暴動
パリ郊外ではじまった暴動がフランス全土に飛び火し11夜目の昨夜には1400台にのぼる車が炎上した。今や放火だけではなく、散弾銃をぶっ放している若者もいるらしい。なにを勘違いしたのか、ドイツやベルギーにも波及している。きっかけはフランス郊外で警察に追い詰められた若者二人が変電所(発電所?)に逃げ込んで感電死したことにはじまるのだが、次期大統領の座を狙うサルコジ内務相が現場にやってきて、「この場所を高圧ホース(karsher)で洗浄する」と発言したのが直接のきっかけである。「悪と闘う」と彼が悪と呼称する少年達二人が死んだ現場での発言がテレビで全国に放映され、それを見た移民系フランス人の若者たちが怒り狂っているのである。したがって今回の暴動は、サルコジ対移民系フランス人の若者、という構図であり、サルコジ更迭ないし辞任が若者たちの要求である。
私の周りの意見を聴くと、これはおこるべくしておこったことだ、というフランス人が多い。2003年にサルコジが導入した警察改革が背後にある。フランスには二種類の警察があり、日本の交番のような近所の治安を取り締まる警察と、犯罪捜査のための治安警察がある。サルコジは前者を縮小し、後者を拡大した。また、警官にポイント制を導入した結果、警官達が移民系のフランス人が多く暮らす地区にパトカーで乗り付けては意味もなく若者をひっつかまえてポイントを稼ぐ、ということになった。その結果として、警察と移民系のフランス人との間に緊張が増大していたのであり、それが起爆した、ということなのだ。左翼系のフランス人のコメントは、「これは革命だ」ということになる。68年革命がインテリの自己満足だったならば、今回の革命は虐げられた人民が立ち上がっている、ということになる。
しかしながら、これはあくまでも暴動であり、革命といった趣の戦略はない。なにしろ同じ貧乏な地区に住む仲間の車に火をつけているのだ。60年代のデトロイトのように、自分で自分のものを破壊する、という暴動がある程度ピークを過ぎたころに圧倒的な治安警察ないし軍が片っ端からそこにいる人間を検挙し、これまたデトロイトのように廃墟と化すのだろう。一方でやりすぎたサルコジ自身も世論の批判の的となることは間違いない。また、イラク侵略2003に反対したフランスではあるが、今回の暴動の当事者達が「テロリスト」として扱われ、これを期に「テロとの闘い」的な意見がもたげてネオコン大喜び、てなことになるのかもしれない。