研究態度

サイバーパンク開祖の一人でもあるブルース・スターリングの記事がネイチャーに。

"Ivory Tower" BRUCE STERLING
Nature 434, 806 (07 April 2005)

ネットで物理を勉強できるんでアマチュア研究家がすごい勢いで増えているってな話。特にインドと中国。新しいスタイルの物理をプレイズして、「象牙の塔」及び官僚をこき下ろしている。以下クリップ。学術雑誌に論文を書く、ということの意味はどんどんなくなっていくだろう。ハードメディアe.g.新聞の記事の存在意義が変質してきているのと同じことかもしれない。

Frankly, physics is a lot easier to learn than physicists used to let on. The ultimate size of the smallest particles, the origin and fate of the Universe ― come on, who could fail to take a burning interest in those subjects? If we were genuinely civilized, that's all we would talk about. In the new world of open access, ultrawide broadband and gigantic storage banks, physics is just sort of sitting there.

So to find time for our kind of science, we had to dump a few shibboleths. For instance, we never bother to 'publish': we just post our findings on weblogs, and if they get a lot of links, hey, we're the Most Frequently Cited. Tenure? Who needs that? Never heard of it! Doctorates, degrees, defending a thesis ― don't know, don't need 'em, can't even be bothered!

先日id:isuzukiさんから拡散関連の話題でid:svnseedsid:synonymousさんとちょっともりあがった時の話を、オープンソースな研究、ということでお褒めいただいたのだが、研究者がオープンマインドになれば、可能でおもしろい世界なのだよなあ。これに拮抗して「科学技術国家」的な権力の仰圧(”特許で儲けたい”)があるわけで、実際に私もこのことで圧力を受けたりする。まだ論文書かないでください、みたいな。

追記
ブルース・スターリングのブログ
http://blog.wired.com/sterling/

もう少し書くと、私自身高校では物理を選択しなかったし(物理の教師がいやな人間だった)、学部時代にあまりに物理の学習を放擲していたので(id:svnseedsと飛行場に遊びにいったりしていた)、20半ばを過ぎてからネットで自習することになった。たまたま同期して生じたネットの発達がなかったら、勉強するのはかなり難しかったのではないか、と思う。図書館に行けば本はあるのだが、インターアクティブにすぐに情報が手に入るという状況がなければ、自分の知りたいことを調べるのに苦労し早々に面倒くさくなっていたにちがいない。欠点を言えば、関心の赴くままに勉強したので系統的に学習すること −すなわち物理の教科書を最初から最後まで読み通すーという古典的なステップを踏んでいないので、知識がとても偏っているということ。この欠点は、プロパー物理の人と喋っているときに、なんでこんな簡単なことをしらないのだ、という不審な顔をされるときに意識する。また、私はネット勉強だけではなく物理関係の本はなるべく自分の本棚に集めるようになってきた。ネットとの違いは、関連項目を素早くしることができるということ。ネットでの検索テクがないからかもしれないが、関連項目の情報の密度と質は、ハード本の方が遥かに豊かで私には調べやすい。情報アクセステクニックの端境期にある人間、ということかもしれない。