ドイツ語学習者の減少
院試の第二外国語が私が受験した当時にはまだ理系でも存在していて(確か私の世代が最後である)習ったこともないドイツ語を選択した。フランス語か、ドイツ語か、ということで、問題を見てみてどちらかというとドイツ語のほうが意味を推測しやすい、というだけの理由だった。第二外国語は辞書持込可だったので試験場に向かう途中ドイツ語の辞書を買って、読解の試験をどうにかやりすごした。今思うと無謀にもほどがある、のだが、その独語辞書は3年近くいつ古本屋に売ろうか、と思っているうちにあたふたと思ってもみなかったドイツでの大学院生活が決定し、件の辞書はドイツ語の夜間学校で活躍し、いまでもオフィスに転がっている。人生なんてわからないものよ、と嘯いてみたくなるが、ともあれドイツ語の地位は私の世代ではとても低いと思う。ドイツ語なんてなんの役に立つんだよ、という単純な理由である。戦中生まれの私の両親ぐらいの世代にはまだ旧制高校的なドイツに対する意識が残っていて、長い間ドイツにするんでいる私よりも、ビルドュングスロマンなどについて詳しかったりドイツリートを歌えたりするのだが、そうした古い世代とちがって私は憧憬を継承していない。
ドイツ語で役に立った経験を思い出してみると、ブラジルで出会った白人のおじいさんが、ブラジル(ポルトガル)語以外にはドイツ語少々しかできない人で、つたないながらコミュニケーションがドイツ語で成立したので、ナルホドー、こんな風なこともあるのかあ、と思っていたら、東欧の方面でも英語はできないけどドイツ語はできる、という人が結構いたりして、習っておくものだなあ、と感じることがある。いずれにしてもドイツ語だから、という理由ではない。言語は習得すればするほど、こうした機会が増えるのはいうまでもないことである。
ドイツ語の文献を見て内容を把握することができる、というのは役に立つことがたまにある。博物学・生物学・医学はドイツ語主流だったので、古い文献などを眺めたときに内容がわかるのは興味を満たす上でありがたい。しかしアップ・トゥー・デートな内容、というと、理系は英語が圧倒的なのでこれまた、とりたててドイツ語を習得する価値は見えにくい。下の表を見ていておもしろいなあ、と思うのは、ドイツ語と同時にフランス語が、中国語とイタリア語に食われている、という点。「大きな物語」の霧散がこんなところにも反映されているのだろうなあ、と思うと同時に、経済とジローラモの偉大さを感じたりする。
ドイツ語離れ食い止めろ W杯契機、学者ら知恵絞る 2005年03月09日
◆NHK語学テキスト発行部数(単位・万部)
(英語関係は除く)
ラジオ
94年度 04年度(1)ドイツ語 14 (1)中国語 14
(1)フランス語 14 (2)ドイツ語 11
(3)中国語 12 (2)フランス語 11
(4)スペイン語 9 (4)イタリア語 10
(5)ハングル 8 (5)スペイン語 9
(5)イタリア語 8 (5)ハングル 9
テレビ
94年度 04年度
(1)ドイツ語会話 14 (1)ハングル 20〜18
(5)ハングル 8 (6)スペイン語会話 10