Portes du Soleil

金曜から月曜までスイス・フランスの国境にあるスキーエリアPortes du Soleilでスノボ。例年のごとくレーシングボードで速度とカービング目的の滑降を三日間。スイス側はChampery、フランス側はアヴォリアーズ(Avoriaz)という村。間にある2000メートル強の山モセットにつらなる稜線が国境になっている。山の頂上はリフトの乗り換え地点になっているのだが、同じICカードを使って往来できるので、国境を越えているという気分にはあまりならない。フランス側で食事ができるというのがとてもすばらしい点で、毎日2時間近くダラダラ昼食。山の中とは思えない質の料理を出すレストランがあって、毎日感動毎日飽食。仲間の中には、せっかく遠くまですべりにきたのだから、とリフトでパンを齧りながら滑っているのもいたけど、ダラダラ食事が好きなイタリア人・スペイン人と私もダラダラ。そんなわけで、午前中に猛烈な勢いで滑った後、午後ゆっくり飯を食ってあとは飯仲間とフラフラ遊びながら滑る、という三日間になった。
国境には壁も何もないのであまりなにも考えていなかったのだが、月曜にフランス側で滑ってからスイスに戻ろうとしたら、強烈な寒風の吹く中、スイスの国境警備員にパスポートの提出を要求された。一緒にリフトから降りて一部始終を眺めていた仲間のフランス人・イタリア人・ドイツ人・スペイン人は、こんな場所でアリエナイ、と一同たまげていたが、いやー、だけどおまえは確かに怪しげなアジア人ドラッグディーラーにみえる、と妙に納得していたりもしていた。たまたま最終日でパスポートを持っていたからよかったものの、持っていなかったらその場でおいかえされてフランス側からとぼとぼ一人で汽車でかえることになっていたかもしれない。
とはいえ、このパスポートチェックは実は演出だった可能性が実に高い。というのも、麻薬犬をつれた国境警備員に捕捉されるや否や、テレビ局らしきカメラクルーが取り囲んで私がパスポートを取り出す様を逐次撮影し、パスポートはこれ見よがしに広げられ、カメラは身元が記載されているページをズームアップにしていた。国境警備員に問答される際にはマイクが頭上をぶらぶらとしており、パスポート確認のちに、私がスノボでずるずると滑り去る様子など、一挙一投足を仔細に録画していた。よくある”国境警備隊24時間密着取材、危機一髪!ドラッグディーラーとの熾烈な攻防!”的テレビ番組向けの演出である、と思えなくもない。というわけで、フランスないしはフランス語圏スイスで近い日に、なんじゃこりゃ、というマヌケ顔で尋問されるスキー場の日本人をテレビで見かけたら、それは私です。