知財立国

知的財産高等裁判所なんて企画があるんですねー。id:walkinglintさん経由(040731付)。知的財産保護の推進ってのはどうやら、自衛隊派兵と同じような理屈で行われている。法的な手続きを危機感を煽って無視する、という理屈。法律はたてまえである、目下日本は危機にあり、たてまえなんていっていられない、という立場で法的手続きをはしょりましょう、と臆面もなく堂々と主張しているわけだ。このあたり煽動的愛国心の腐臭がする。コイズミ的世界観。「知財立国」。滑稽。かくなるコンセプトのもとになぜ大学行政・財政がなんであんなにみじめなのか。

知財戦略で勝つ・第17回「首相の眼前で展開された知財改革の抵抗勢力」
の結論部分

民間本部員や産業界などから強く出されている、知的財産高等裁判所の創設に反対を表明したのである。といっても、大臣はいずれも、各省の権益を護ろうとする、「省益あって国益なし」の視点で官僚が作成したメモを読み上げたに過ぎない。

 さらにある民間本部員は、技術系裁判官の導入に明確に反対を唱え、「アメリカの技術判事は、知財案件を判断してはならないことになっている」「推進事務局には、知財を総合的に判断する人がいない」「骨子の中に意味の分からない項目がある。たとえば知財学とあるが、このような学問はない」などと主張した。

 日本の産業競争力を強化するため、知財立国を小泉内閣の目玉にしようとするとき、行政の一角とそれに群がる一部の法律学者が寄ってたかって逆行する主張を展開する。

 しかも主張の根拠は、「我が国の法体系」から論じようとする、まず法律ありきの考えである。社会のニーズを前提にした新たな法理論の構築ではなく、「我が国の法体系」というさびついた道具に固執する。

 産業界の実態を肌で感じていない官僚や司法当局者や法律学者が、「法体系になじまない」という錦の御旗を掲げて反対する。社会の実態があって初めて法律は存在する。社会の実態がないところに、法律など存在しても意味がない。

中略

国家の進路の岐路である。知的財産推進事務局は、断固とした決意で抵抗勢力を排除し、小泉首相がたびたび表明している「世界トップの知財立国」への道筋をしっかりと確立してもらいたい。

というわけで、この動きに対していろいろ反応はあるみたいですが、

まぁ、こういう勘違いは、特に技術や特許から入った「昔ながらの特許マン」にはありがちなんですけど。要は法治国家というか、社会構造の全体像がつかめていないわけなんです。

「迅速化」が実現するなら、知財専門の高等裁判所を設置するのもいいと思います。
しかし、実務に携わる者の一人として、「裁判所が何をするところか」「三権分立とは何か」もよくわかっていないような、こういう技術系裁判官に法律判断をして欲しくはないです。たとえ特許法に詳しかったとしても。
http://ch.kitaguni.tv/u/171/INTELLECTUAL+PROPERTY/0000003341.html

や、

この推進計画の一部に見られる実に歯切れの悪い表現となっている部分(特に、最高裁判例を立法で葬り去ることを企図しているとしか解釈し得ない箇所)については「中山先生が事務局へ乗り込んで『こんなものを政府に了承させたら日本は法治国家ではなくなってしまう』と該当箇所の削除を要求(結局、荒井氏ら事務局スタッフが頑強に抵抗した為に削除はされずややトーンダウンした表現に後退)した」ものであると言う情報を筆者は入手している。
http://blog.melma.com/00089025/20040125180634

参照

marinesはチャンネル?
そもそも裁判所って何するところよ
技術系裁判官は必要か?
愛国者と知財ファシズム①「なぜ今『知財立国』なのか?」
愛国者と知財ファシズム②「『知財ファシズム』でも『アンチパテント論』でもない第三の道へ」
謎工さん。
【特設】中山教授「重大決意」問題] やり場の無い怒り