いずれはこうなることはわかっていたのだが、遺伝子スクリーニング、解析、推論、次の実験の計画、スクリーニング・・・を行うロボットが発表された。ゲノムプロジェクトの進展と共に、遺伝子はわかっているが、機能がわからない、という蛋白質がぞろぞろ出てきているので、こうした機械が必要になってくるわけだ。これは科学なのだろうか?

なんと大学院生やポスドクがこうした作業をおこなって、その作業に「科学」のタイトルが与えられてきたのである。10年程前に、遺伝子クローニングは、博士論文になった。その10年前は、遺伝子配列をいくつか読み取ったら、それで博士論文になっていた。技術の進展と共に、こうした作業がルーチンワークとなり、科学ではなくなって単なる技術になっていく、ということは眼に見えている。

しかし、単にロボットが存在しないから、その手作業を科学と呼ぶ、これでいいのだろうか?上の記事で、ロボットの開発に加わったステファン・オリバーがいっている。「次のステップは、ロボットが全く新しいことを発見できるようにすることだ。たとえば新薬の発見とか」。

私が思うに、今の科学の大部分は、本来の創発という意味での科学ではない。ロボットに可能なことが増えていき、科学者はどんどん肩身がせまくなる。でも私はそのことがとてもうれしい。くだらない作業主体の枚挙科学を行って論文を増産するアホが淘汰されるからである。