アルミニウムの椅子

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知人の建築家の家にはこの椅子が並んでいる。見た目はバウハウス的な無骨さなのだが実に座りごこちがよい。その家を訪ねるときには「あの椅子に座れるな」と同時に思いだすほどだ。

アルミには脆弱なイメージがある。アルミホイルや、一円玉のように。しかしこの椅子はとてもしっかりしていて、座って体ずらしたときにゆがみが生じない。なおかつとても軽い。この相反する性質がとても新鮮な感覚を生じさせる。相反する性質を見事に実現し、経験に驚きを与える。

作りの堅牢さと持ち上げたときの軽さ、というのは椅子の存在として相反する性質のはずである。少なくとも私の経験は、軽い椅子はゆがみやすい、という推測を反射的に生じさせ、座ろうとする体にあらかじめ警告する。しかしこの椅子の場合、座るやいなや危機感は霧散し、警告は裏切られ、深い安心とフィット感が体を満たす。