イラク情勢 2003年11月11日−12日

11日

ブッシュ米大統領がアーリントン墓地で演説。語録。

「我々が従事している仕事は容易ではないが、極めて重要だ」
「数十年にもわたって独裁者がイラクの社会と尊厳を踏みにじった後で、(米独立宣言を起草した大統領の)ジェファーソン流の民主主義が数カ月のうちに芽生えることはない」
イラク人を恐怖に陥れ、米国や同盟国をおじけづかせるのが目的だ」
アフガニスタンイラク民主化が失敗すれば、民主化を求める中東地域の数百万人の希望を絶つことになる」
中東民主化構想
米兵について「極めて大きな損失だ」
「あなた方の愛する人たちは、正しく義にかなった目的のために命をささげた」

駐留米軍サンチェス司令官、記者会見で「戦闘地域と非戦闘地域の区分けは困難」。米英に対する襲撃は一日30から35件。

小泉首相、「日本は戦闘行為にいくわけじゃないですから。」と官邸でコメント(みせしめとしての格好の標的になりに行く、ということだからウソではない。今日のイタリア軍に対する攻撃でもわかるように、ゲリラの戦法は「同盟者から崩せ」という孫子の兵法なのだ。)。

米軍、スンニ派三角地帯で一万発のロケット砲、迫撃砲を押収。

夜、米英占領当局(CPA)本部があるバクダットグリーンゾーンにロケット弾数発。

11日付フランス・フィガロは、米民主党幹部らがブッシュ大統領に(1)押収との首脳会談開催(2)NATOへの指揮移管を要請、との報道。

ポール・ブレーマーが突然予定外の米国一時帰国。イラクでの情勢悪化を受けて、権力委譲を早める話し合いが行われるのではないか、というのが英・ガーディアン紙の推測。

米軍兵士、バクダットで一名、バクダットの北西部で一名死亡。いずれも「即興爆弾」(IED Improvised Explosive device)の爆発による。米軍勝利宣言後、156人の米軍兵士が死亡。

12日

英医療団体メッドアクトが、イラク戦争で2万1千から5万5千のイラク人が殺された、という推計を発表。(AP)

午前10時50分、イラク南部ナーシリア、イラク警察軍の駐屯地で自爆攻撃。イタリア軍兵士17名死亡、イラク人8名死亡、多数が負傷。日本自衛隊派遣予定地サマワはナーシリアの北西100キロの近傍。

「実行犯はフセイン元大統領に忠誠を誓うフェダイン・サダムなどの勢力とみられる」とイタリア国防相、根拠は示さず。一方で、復興への関与継続を強調。

米軍、バクダットでシーア派指導者の乗った車に発砲。運転手が足に怪我。

福田康夫官房長官は記者会見で自衛隊年内派遣を強調(昨日の京都新聞の報道「年明けまで延期」情報はガセらしい)。

AP電によれば、12日、ブッシュ大統領、チェイニー、ラムズフェルド、ライス、及び昨晩緊急で米国に一時帰国のブレーマーがミーティング。政権移譲を早め、より多くの権限をイラク政府に移管するべきだ、とブレーマーは提案。

CIAによるイラク情勢解析レポートのリーク。イラク情勢急速悪化の警告。

The CIA analysis suggests U.S. policy in Iraq has reached a turning point, as the Bush administration moves to escalate the war against the guerrillas and accelerate the transfer of political power to Iraqis.
[Link]

レポートの内容:

  • 昨日サンチェスがバクダットで宣言したような「より強力なゲリラ制圧」の方向は、より多くのイラク人をゲリラ化することにつながる、と指摘(CIAが解析しなくてもそんなことはわかりそうなものだが。)。
  • また、米国がバックアップする元亡命イラク人の指導者達は、イラク人に支持されていないこと
  • 多くのイラク人が占領軍に武力反抗して米軍を追い出すことが可能だと自信を持ち始めていること
  • シーア派スンニ派貧民層が地下で手を握り始めたこと、などを指摘。
  • ゲリラ側にとって武器弾薬は豊富であり、調達も容易。

ブレーマーはこのレポートの内容に基本的に同意したという。機密扱いのこのレポートがこれだけ早くリークされたのは、米国高官の提言がブッシュ、チェイニー、ラムズフェルドに無視されつづけているため、ブッシュが確実に目を通すようにするための官僚的な工作、という見方。