田舎町

人口が10万人という小さな町なので、うろうろしているとすぐに知り合いに出会ってしまう。もはや知り合いに突然であっても驚かなくなってひさしいが、さきほどスーパーに行ったら3人たてつづけに知り合いに会ったのでなんかもー、ちょっとおどろいた。一人は同僚のドイツ男。もーすぐ閉店だねー、などといいながら加工肉売り場のまえですれちがった。次の一人は天文学者のイタリア女。ナポリいってたんだって?ピッツァマルゲリータはちゃんとたべた?結婚式はどうだった?などと立ち話をしたのはお茶などが売っている列だった。最後のひとりは昨晩いたバーで歌を歌っていたフィンランド女。わー、偶然、などと向こうは喜んでいたが、こちらにしてみりゃ3人目、ということでおよよとなってしまった。野菜売り場の前である。
話は飛ぶが、フィンランド語の単語はどうにもゆかいな気分になってしまう単語が多い。日本語からみて、ということなのだが、たとえばパルツリ。理髪店のことである。あまりにも音がそれらしいので一発で覚えた。クッキア。花。音的に茎っぽい。「止まれ」という命令はセース!静止に似ている。町の中心(チェントロとかツェントラム)はケスクスタ。くすくす笑っている感じ。市場はカウッパ。買う場所ですな。ムーミンにでてくるニョロニョロはハッティバッティ。ちなみにフィンランド人にとっては「ニョロニョロ」という日本語の語感がたまらなく愉快らしい… という訳で覚えるともなくおもしろがって口ずさんでいるうちに覚えてしまった単語がやたらとあって、歌手のフィンランド人の女の子と盛り上がったのは、わたしがせがまれるままフィンランド語の単語を次から次へと呪文のごとく開陳したからである。なおいちんばんのお気に入りの単語はコスケンコルバサムルヤッキ。発音しているだけで愉快な気分。フィンランド人が大好きなカクテルであるが、塩化アンモニウムの味のするとてつもないカクテルで(サムルヤッキというのがそもそもとんでもないキャンディーなのである)、嫌いなのにこれまた音が面白いのですっかり覚えてしまった。2時ごろのバーのカウンターに、グラスを手に握ったまま酔って突っ伏し「こすけん…こるば。さむる…やっき」なぞとつぶやいたらなんかさまになりそうではないか。