ナポリ散策、結婚式


10年前に行って以来、どうしてもまた行きたかった、現在スパニッシュ・クォーターと呼ばれ、"Scappa de Napoli"ともよばれる貧民地区。Scappaという言葉には断絶の意味があって、他の地区からの断絶を意味するそうである。狭い街路にぼろぼろのアパートが林立していて、昼でもなんとなく薄暗い*1。通りに面した階への入り口は開け放たれていて、すぐそこにベッドやテーブルが置いてある。おばあちゃんが椅子に座ってテレビを見ている。あるいは椅子とテーブルを道に出して、おじいちゃんが新聞を読んでいる。昔の東京の下町ってこんな感じだったんじゃないかなあ、と思うことしきり。あー、実によい、スバラシイ、と思いながらふらふらと歩いていたら、開け放たれた窓から裸の女の子が胸をタオルで隠しただけの姿で、窓をしめようとしているのに出くわした。髪が濡れていたので、シャワー浴びたところだったのだろう。その10代後半ぐらいのとてもきれいな女の子は通りすがりの私と目があってもあわてることもなく窓から乗り出して片手でパタパタと窓をしめていた。こちらはしばし茫然やがてドキドキ。背中の優美なラインが目に焼きついてしまった。いやはや実にスバラシイ。観光客にはとても危険な場所で、この地区に学生のとき3年間住んでいたというナポリっ子の友達の妹にもあそこいくのならば注意しろ、と忠告される*2。鞄はもたず、スーパーの買い物袋に地図なぞをいれてふらふら。危険な場所に関してだが、ナポリに住んでいる人に聞くと実に細かくこの道路はヤバイ、とかわけがわからないほど錯綜している。こうした情報は最近そのあたりで何件か強盗があったから、とか実にあやふやかつ流動的な情報である。


ナポリの街角の壁はとても芸術的。要は汚いのだが、汚さが堂に入っているというか、じつにうまく汚いのである。夜半にふらふらしながらなんども立ち止まって眺めいってしまう。


労働組合*3がデモしていた。警察もわんさか。


ナポリに行ったのは友達の結婚式の出席のため。車で30分ほどの村の役場で式。教会ではなく役所でやる、というスタイルで、左側に立っているおじさんが村長さん。時間どおりにいったら誰もいなくて、始まったのは一時間後だった。夜の宴会は近くの山の上の広場。ナポリ大学の先生方に(新婦はナポリ大学の准教授なのである)、いつでもセミナーでも講義でもやりますのでぜひぜひ、と猛烈に売り込んできた。

*1:衛星画像だとこのあたり

*2:前日付けにコメントのあるムラカミと10年前に訪れた際にはムラカミがバカ高いニコンのF4だかをぶら下げていたんで -やめろと止めたのだがカメラマン魂がどうのといってムラカミはカメラをぶらさげっていったのだった- スリが次から次へと寄ってきて大変だった。よい思い出。

*3:追記。あらためて旗に書いてある文句を眺めてみたら、Disoccupattiのユニオンなので失業者の組合ということか。なお同じ組合の本部らしき建物を飛行場に向かう車からみつけたのだが、建物というよりも要塞みたいだった。昔からイタリアは労働運動が盛んな国である。