Yes We Can't  うん、できない。

William Forsythの新作"Yes We Can't"を観てきた。場所はいつものフランクフルトの倉庫。正方形の舞台にマイクが二本置かれていて、いくつものエピソードはそのマイクを中心に展開。マイクで語られるのはさまざまな断片的な言葉や叫びの反復で、そのほとんどが詐欺師の言葉のごとき内容である。"make your wish..."と意味ありげに言ってみたり、方や"three fingers, four holes, no grease, no doubt"などと説得口調で言ってみたりと(この喋り方は欧米の政治家を思わせるわけなのだ)あきれるほどのあつかましさと虚無感で言葉が与えられる。舞踏はその言葉をめぐって繰り広げられ、特に対称の位置では対面するダンサー二人から三人の間で”アルプス一万尺”のごとき手遊びが激しく行われる。かくなる困惑のうちに困惑を通り越して笑うしかない、ということで観客席からは失笑がたびたびまきおこる。フォーサイスの舞台ではこれはなかなか珍しい。そうこうするうちに唯一これは信じていいのかしら、とおもえる言葉としぐさ"take my hand, take my hand"でさえも、それはあまりにはかなくこの言葉を最後に舞台は溶暗。