猫の動き

「猫の絵を描くのは難しい」という話をみかけた。ああ、そうだろうな、と思う。猫を眺めるのが私はすきなのだが、その魅力は生真面目な表情でハエを追いかけたり床にねころんで尻尾を柳のように揺らせているそのしぐさや動きを眺めることにあるので、絵に落として静止した状態にしてしまうと途端に魅力が半減する。もちろん丸くなっている猫をながめていてほのぼのした気分になるのもまたよし、なのではあるが、その丸くなった状態から目が離せなくなったりするのは、いつ動き出すかという期待がそこはかとなくあるからなのだと思う。Youtubeにやたらと猫の動画が投稿されるのもこうした理由なのだろうな、と思っている(犬の動画の投稿数と比較したらおもしろいかもしれない)。北斎の描いた猫の絵に、おお、これは、と思ったことがあるのだが、この場合は複数の猫がさまざまなしぐさで座っているところや伏せているところを描いて、全体として動的な雰囲気をうまく表現していた。
人間でも写真に撮ってしまうと魅力の半減するタイプの人がいるが、これもまたしぐさや動きにどこか魅力があるからで、ある状態からある状態への移り変わりそのものに、目を奪わせるようななにがしかの特徴があるのだろう。