報告書『Japanese Military's "Comfort Women" System』 について

解決不能の葉隠覚悟さんのページに、07年4月3日付の米議会調査局の報告書へのリンクが貼ってあったので、夜1時半の夕飯(米、えのきおすいもの、大根ときゅうりの糠づけ)を食べながら読みました。

著者は上記調査局のラリー・ニクシュさん(CV)。戦争中の慰安婦の問題に関しては8ページから13ページ最初までぐらい。ほとんどは戦後の日本政府の対応、アジア女性基金、関連各国の対応に関するまとめ。これがけっこうおもしろい。昨年からDCの論壇では日本の右傾化が話題になっていて、それにたいしてサンケイの某コモリ氏が”それが普通なんです”ってスミソニアンのあたりを駆けずり回っているらしいけど(あまつさえこのトピックで話題にしている報告書の希望的誤読まで堂々と記事にしているが)、この経緯見たら明らかに少なくとも歴史修正主義傾向にありますというのが一目瞭然。

さて、慰安婦の問題に関しては次の三点に問題を絞っている。

(1) The degree of involvement of the Japanese military and government in creating
the comfort women system:
どの程度日本軍、政府が慰安婦システムの作成にかかわっていたか。-->関わっていたことはあまりに明白、という結論。

(2) Whether the Japanese military was involved in the recruitment and transportation of comfort women and in administering the "comfort stations" where the women provided sex for Japanese soldiers.
日本軍が慰安婦システムの維持(徴募、搬送、運営)に関わっていたかどうか。-->さまざまな証拠は、システムの徴募、搬送、運営といったいずれにおいても軍が関わっていたことをしめしている、と結論。

(3) Whether women were brought into the comfort women system and served there voluntarily or involuntarily.
慰安婦システムに入った女性は、自分から進んでそうしたのか、そうではないのか。この点は特に詳しくかかれている。なにしろ安部さんが否定した部分だから、なのだが、結論は

There is no doubt from the available evidence that most comfort women were in the system involuntarily if one defines involuntarily to include entering the system in response to deceptive recruitment. There appears to have been little of a genuinely voluntarily nature to the system.

自分からすすんで慰安婦になった人はほとんどいない、という結論。
慰安婦自身の証言をもとにした話になので、最近の日本の”強制なんてなかった、ありゃ売春婦だ”的人々にはとっては”元売春婦のいうことなんて信じられるか、証拠をだせ”ということになるのだろうけれど。ちなみにこれは「うそつきのクレタ人」的な部分がある。彼女達が売春婦ではなく、強制された結果慰安婦になったのであれば、補償金に群がる元売春婦という先入観はすくなくとも意味がない。逆だとしたらあくまでも彼女達が守銭奴の売春婦ないし詐欺師とあくまでも主張するしかないわけで、まあ、ツライしあさましいし、ですな。というかそれが現状某首相をはじめ現内閣なわけだが。

読んでいてへえ、と思ったのは次の部分。

The Prime Minister's contradictory statements appear aimed at placating if not supporting the LDP Committee to Consider Japan's Future Historical Education, who wish to amend or remove the Kono Statement and probably absolve the Japanese military from any responsibility for the comfort women system.

今回の慰安婦関連発言に関する安部首相自身の対応の迷走ぶりは、「日本の歴史教育を考える会」の歴史修正主義運動を冷却するねらいがあるんじゃないか、と踏み込んだことをいっている。
”迷走ぶり”は実は”矛盾”と訳すべきなのだろうけれど、いやはやそんな論理的なものだろうか、と思わず迷走ぶり、に意訳しました。それにしても、そもそも歴史修正主義者の安部首相だから、これはうがちすぎ、というかなんというか、と私は思った。まあだから"if not supporting"なのでしょう。

つづけて、ここがクールですが

The study, which these Dietmen have announced, and the reactions to it by the Japanese media and the public will be important indicators of the historical revisionists influence in Japan now and in the future.

内閣の人々の修正主義的な発言に対して、日本のメディアや人々がどのように反応するかは歴史修正主義者の影響が今、そして将来にわたりどれほどのものなのかを知るよい指標になるでしょう、としている。というわけであなたたちはみられているんですよ、日本の皆様*1

*1:といっても『ネット上では圧倒的 「慰安婦問題で謝罪するな」』なんだそうで。コメント欄が勇猛ですごいです。ネットマッチョっていうのかな。