展覧会の様子

重要なことを書くのを忘れていた。師匠のベッヒャー夫妻の展覧会は百枚以上の作品に観客は4人でその白黒写真に似つかわしく静謐でストイックだった。一方で弟子の展覧会はやたらと混んでいてこれまでにないほどの人だった。展覧会を見終わった後で草間彌生のマンハッタン自殺未遂常習犯の歌がかなりの音量で響く中*1ミュージアムショップでグルスキーの写真集を眺めていた。すると人ごみのなかでわりわりと小学生ぐらいの男の子ふたりが人をおしのけて写真集にかぶりつき、分厚いその写真集をひっくりかえして「ちぇっ、72ユーロだって、高っ!」といいながらすぐにいなくなっていった。子供が欲しくなるような写真である。グルスキーの写真は辞書、というよりも図鑑というのが正しいかもしれない。

*1:草間彌生のdot obsessionという展示もあった。ショッキングピンクに黒いポチポチの巨大なボールがそこここに置かれ、浮かんでいるところに浪々と響き渡る草間自身による『マンハッタン自殺未遂常習犯の歌』はなんともカルトめいていて、でもあの響きに念仏を思い出すのはたぶん東洋の人間なんだろうなあ。