名前はない。

マフィアのボスに関して、もうちょっと知りたいな、と思っていたのでシチリア出身の人に聞いた。ローマのイタリア人はパドリーノ(padrino)ではなくコンパーレ(compareかな)こそがマフィアのボスのことであるといっていたが、シチリアの人は「いやそれはよくある誤解だ」とのこと。コンパーレの本義は、たとえばAという男がいて、その子供に名前をつけたPadrinoがBという男ならば、AはBのコンパーレ、互いの関係は複数形でコンパーリ、ということになるのだそうである。子供を介した生物学上の親と名付け親の義兄弟関係、とでもいえばいいのか。パドリーノ以前のマフィアのボスの表現の仕方は「誰もそのことを喋らないので、そんなものない」と実にもっともな答えだった。通常ファミリーの中で最も年寄りが事実上のボスなのだそうである。歴史上マフィアの転換期は1978年なのだそうでそれ以前とそれ以後では決定的にマフィアのありかたが違うのだとか。ひとつには年功序列がなくなったことがであるが、シノギの違いが大きい。以前のマフィアは日本のむかしのヤクザによくにている地元密着型。78年以降はドラッグや違法企業などのビジネス系マフィアになったのだという。転換期に決定的な役割を果たした人間が映画になっているので見てみたら、と薦められた。”I CENTO PASSI”という映画で、日本でも上映されている。邦題は”ペッピーノの百歩”。マフィアの家に生まれながら左翼運動に傾倒、ラジオでマフィアを批判するキャンペーンを展開して78年に暗殺された青年が主人公である。イタリアの左翼運動の映画ってなんかいいよなあ。イル・ポスティーニョとか。
Link:ペッピーノの百歩