人脈
町田の桜美林大学で、開かれた『緊迫するアジア情勢と日本』というシンポジウムの様子。最後に登場する中国人留学生の発言が心をうつ*1。祖国をはなれて暮らす人間の共感もある。おれもこんなふうに堂々と人のまえで発言したいものだ、とつくづく思う。空気読みにはできんだろ。
ところで、なのだがパネリスト。
逢沢一朗衆議院議員(自民党)
前原誠司衆議院議員(民主党)
松原仁衆議院議員(民主党)
西原正(平和・安全保障研究所理事長)
小峯弘靖(PHP総合研究所研究員)
加藤朗(桜美林大学教授)
他に、高市早苗大臣(自民党)が遠隔参加
討論の主な内容は次の通り。
東アジアの国際情勢
「第二次・朝鮮半島危機」問題
「米軍再編成」と日本の対応
近未来の「アジアの有効・融和・統合」のために
なんじゃこりゃ。このパネリスト、ほとんど全部松下政経塾ではないか。
「志」団体なんやね。
逢沢一朗 (一期生)
http://www.mskj.or.jp/profile/aisawa.html
前原誠司 (八期生)
http://www.mskj.or.jp/profile/maehara.html
松原 仁 (二期生)
http://www.mskj.or.jp/profile/matubara.html
高市早苗 (五期生)
http://www.mskj.or.jp/profile/takaichi.html
小峯弘靖 (十期生)
http://www.mskj.or.jp/profile/komine.html
西原正(平和・安全保障研究所理事長)さんは、30年にわたって防衛大学で教鞭をとった元防衛大学学長。天くだり先の研究所ってのは、メンバー見たら、軍産複合体。例のアメリカンエンタープライズインスティテュート(AEI)の会合で喋ってた金田秀昭さんが理事。同じくしゃべっていた佐藤達夫さんが評議員。なお、金田さんは防衛大学出の弾道ミサイルシステムの専門家、元三菱総合研究所主任研顧問。現在所属する岡崎研究所はNPOで、どうも日本戦略研究所(http://www.jfss.gr.jp/)に近い。瀬島隆造ですな。また、佐藤達夫さんは、三菱商事執行役員宇宙航空本部長で、これまたミサイル関係の産業側の人。「産業構造審議会航空機宇宙産業分科会宇宙産業委員会宇宙産業化ワーキンググループ」ってな長ったらしい名前の経産省のグループのメンバーでもある。この佐藤達夫さんって人は、キーパーソンらしい。社団法人日米平和・文化交流協会っていう外務省関連の法人があるのだが、これまたAEIの会合でスピーカーだった前田誠司、久間章生、佐藤達夫、石破茂諸氏が理事を連ねている。まあ、ここでもなにやら、またまた輪が閉じる。
で、こうした人々のヘッドがおそらく西原さんなわけである。なにやら人徳のあるひとなのだろうか。で、その元につどう松下政経塾同窓生が桜美林大学に集って、学生を啓蒙した、というわけですな。それにしても、上記中国人留学生のことばに
彼女の質問の直後、会場から拍手が沸き起こったそうです。発言した彼女は一介の留学生にすぎません。ところが、パネリストたちからはただの一人も満足な答えができなかったという。
環境問題の上記の質問に対しては、逢沢議員が次のように答えたそうだ。
日本はODAを渡すときに、中国に環境汚染に対して注意を促すが、中国は日本に戦後賠償金をもとめなかったのだから、ODAをいかに使うかまで口をだしてほしくないという。
教授のなかには、親戚の小学生が中国で日本人だからといじめられたのを引き合いに出したそうだが、ここでは自らがまったく無能さを露呈してしまっといえる。
日本人でまともなことを言ったのは桜美林大学の大越貴副学長くらいだったようだ。これはパネル討議の閉会の挨拶を述べた時である。
『緊迫するアジア情勢と日本』を語る資格はどうやらパネリストにはなさそうである。ひとりの中国人留学生の批判にタジタジになるのだから。さらにいえば、そうした外交コミュニケーション能力のなさが、いきなり武装に向かうところが私にはそら恐ろしい。つけくわえるが、彼女の発言に拍手をした学生たちにも私は心から拍手を送りたい。
*1: 20130308追記 6年後にもこのサイトはあるが、なくなるとこまるので、発言部分を引用しておく。…「日本は「中国の脅威」というけれども、それでは中国は昔のような状態であればいいのか。昔の中国であれば、日本は友好関係を結べて、今の「中国の脅威」と言われる状態であると、友好関係は結べないというのか。▼台頭する中国は日本にとって脅威であるなら、1949年前の中国は日本の国益になりますか。日中貿易はお互いにとって1位になっているので、日本の黒字貿易は中国も貢献しているはずです。これは脅威と言えますか。▼私(中国からの留学生)は日本で生活し、日本で勉強しているので、日本は第2のふるさととなっている。▼しかし、先生方は中国は脅威であるとおっしゃっています。私はこのご発言について心を痛めております。私の周りは日本人は友達がいるから、日本のことが好きになりました。▼西原先生は、中国は歴史教育において日本はけしからんと子供達に教えているとおっしぃいましたね。しかし、私達が勉強したのは45年までの日本であり、現在の日本ではない。先生はどう思います。▼中国にいる中国人は、見ているのがTVに映されている先生方のお顔だけでございます。自分達のことを敵とみなしている相手に、常任理事国入りを賛成できますでしょうか。▼中国の環境破壊というが、日本が高度成長時代に水俣病などの公害に苦しめられた経験や技術をなぜ日本は中国に支援しないのか。」