失せ物・忘れ物

私は忘れ物をよくする。昨日は鍵をオフィスにおいて家に帰り、扉の前で気がついた。途中まで仲間に送ってもらってそのあとふらふらと歩いて帰ったのだが、再びオフィスにもどらなくてはいけない。バスはもうない時間だし、ケータイも盗まれて以来持っていないので車を持っている人間に電話をかけて頼むこともできない。仕方がないのでタクシー乗り場まで歩き、タクシーで研究所に向かった。パキスタン人の運転手で、いやー、かぎ忘れちゃってね、などと雑談をしているうちに、先月の間に車のシリンダーヘッドを壊し廃車にせざるをえない、家のまえで自転車が盗まれ、さらにワールドカップ決勝の夜バー飲んでいてケータイも盗まれた、という話をした。すると「何月に生まれたんだ」という。9月生まれだ、といったら、おかしいな、9月だったら物をなくすのは4月のはずだが、とぶつぶついっていた。パキスタンの星占いらしい。
無事鍵をゲットし、家にもどる道すがら壊れた車はどうするのだ、もうスクラップにしたのか、と私にきく。いや、まだ放置してある、といったらそれ買うかもしれない、と運転手がいう。アフリカに売るのだそうだ。ドイツのスクラップ工場だとこっちが手数料を払わなければいけないので、私としても無料でもいいくらいである。それに加えて自分の乗っていた車がアフリカで再生される、というのもなかなか楽しい話である。ある日BBCを眺めていたら自分のかつての車が一瞬映った、なんてこともあるかもしれない。