Savognin -CH

スイスでスノボをしてきた。忙しくて今期はこれが初。泊まったところがクラブとホテルを一緒にしたリゾートホテルで、若者向けに特化したコンセプトだった。

http://www.cube-hotels.com/en/Cube_Concept.html

ブレゲンツの美術館のような半透明ミルキーガラスの外面をもつ箱状のかなり巨大な建物で、ミニマルな外見はオーストリア、スイス建築業界のトレンド。各々の部屋は半分にしきられていて、廊下側の半分は色つきガラスで透明になっている。この外から見える部分は部屋の鍵がないと入れないのだが、外からは丸見えでごそごそとスキー靴を履いたり着替えている人を見ることができてしまう。廊下はかなり広く、正方形に吹き抜けを囲む形状になっている。この廊下にはソファがふんだんにおいてあって、部屋の中には座る場所がベッド以外にないので、客は廊下でダラダラすることになる。こうした二重のセミパブリックなスペースはなにやら投げやりにオープンな気分を増長させる。廊下の辻にはソニーのプレステが設置されていて、無料なので若者がむらがり、さらに私を含めたオジンオバサンも普段は手にしないビデオゲームを触ってみたりしている。あちらこちらに設置された液晶モニターでひっきりなしにMTVが流れ、朝4時まで地下のクラブがガンガン音楽を流すので部屋にいても重低音を子守唄に寝ることになる。となると、部屋を出て遊びに行ったほうがよい、となってひどく夜遊びな日々になる。地元のティーンエイジャーも交えてヨーロッパのどこの都市でもあるようなクラブ遊びの後には更に24時間営業のバーがホテルのど真ん中の吹き抜け空間に設置されており、しかもソファがリビングルームにあるようなクッションなので床に座り込んで飲むが如し、ということで半睡半酔のうちに朝までへべれけ、「酒ないぞー」ということには決してならない。かくして朦朧と朝を迎えてふらふらとスノボ靴を履いてえっちらおっちら(私はハードブーツで滑っている)と扉を出るとすぐそこがリフトになっており、ベルトコンベア-に載せられるような気分でいつのまにか私は白銀の吹きっさらしのなかに立っており、滑り降りる気分もこれまた仲間共々朦朧。一日滑ってスノボのままホテルの前に到着するので、再び直結で飲めや踊れや、の夜が幕を開ける。プライバシーが消失するのでユルユルな気分になる。しかしながら遊びつづけの三日後にはフラフラである。環境型権力ならず環境型教唆(Environmental Instruction)とでもいえばいいのか。

特筆すべきは深夜の橇滑りだった。夜9時にホテルの前をバスで出発し、真っ暗な中、どこだかわからぬ斜面に連れて行かれる。ヘッドランプを手渡され、スノーモービルに引きずられて斜面を凄い勢いで登る。やがて林道に入り、15分近くうねうねと引きずられた後に山小屋にいたる。5つの橇が直結で牽引されるのだが、私は不幸なことに一番後ろだった。この位置はなにしろ不安定でカーブのたびに最も大きく左右に振られるので私は3度も落ちた(”落橇”?)。一度は私が落ちたことに前が気がつかず、すごい勢いでスノーモービル+4名+空の橇一台は彼方に去って行ってしまって、雪の真っ暗な林道を寂しく歩くことになった。しばらくして後続のスノーモービルが載せてくれたので後に追いついたものの、実に寂しい気分である。とはいえ山小屋でビールなどを飲んで気勢を上げたのちに、50人近い集団で一気に橇で滑り降りる。暗い上に視線が低いので速度感がスゴイ。おまけにブレーキが利かない。他人とぶちあたる。道の側面に乗り上げて転がる。特攻隊である。