あじのひらき
ドイツ人とオランダ人は言葉がよく似ているだけではなく、挙動もなにかと似ている。だからなのだと思うのだが韓国人と日本人の間にあるような近親憎悪の関係にあって、アウトバーンでオランダナンバーの車が走っていると、同乗しているドイツ人たちは、ここで会ったが百年目、という勢いで口々に罵倒し始める。車線変更のタイミングが異常、とか速度が遅すぎる、とかなんとか。スキー場でも格好の餌食である。なんでいつもグループで移動するのだ、写真撮るなら邪魔にならないようにやれ、声がでかくてみっともない、だのなんだの、えんえんと批判しつづける。山道で前に走っている車がオランダ人だと「ブレーキ踏みすぎ」といいつつすかさず「やつらにとっての山は防波堤だからな、ははん」と小ばかにする。私としては声の大きさにしろ運転にしろ大して変わらないと思うのだが、微妙に違うのがともかくも気に食わないらしい。
私が感じるドイツ人とオランダ人の最も大きな違いは、オランダ人が一般に魚好きであることである。海の国だけに、イカの塩辛をうまいうまい、といて食べるのがオランダ人で(魚を食うのは男、ということで女の人はそうでもない)、ドイツ人はうへー、イカの臓物、気持ち悪い、と顔をしかめる。中には日本人でもいやがることのあるカツオの酒盗なども目の色を変えて喜ぶオランダ人までいる。そんなわけで魚食愛好家の私としてはオランダ人のそんな姿に深い共感でうれしくなるのだが、これまたこの共感をさらに高める会社がある。北海水産というオランダ人が社長の魚加工会社である。ヨーロッパ中の日本人に向けて日本様式の魚加工品を販売している会社である。この会社にはホームページがあるのだが、そのページにある社長の挨拶が実に感動的である。一読されることをお薦めする。
http://www.hokkai.com/aisatu.html
鯵の開きに対する情熱をかくも純粋にオランダ人に語られると、なにしろ鯵の開きが好きな私は実に心を動かされる。注文した15枚の鯵が届いて、ますます感動である。