私の車のバックミラーには峰フジコの小さなフィギュアがぶら下がっている。なんかオタクみたいではずかしいなあ、と思いつつも一度下げてしまったら愛着がわいてしまって取り外せない。急ブレーキを踏んでどこかに転げ落ちてしまうと、「フ-ジコちゃーん」とルパン三世の呼び声を反芻しながらシートの下を覗き込んでさがしたりしているのだから、なかばヘンタイである。このフィギュアは、幼少のころから峰フジコが好きで好きで、とポロッともらした人にプレゼントされた。ドイツ人はだれもしらないので、なんじゃこりゃ、と聴かれるたびに彼女は日本ではとても有名な女ドロボウにしてファムファタルなのである、といちいち説明していた。
先日、ヒッチハイクで乗り込んできた若者がイタリア人で、バックミラーにぶら下げている峰フジコを指差して、やおら「おー、フジコー」とおもむろに言ったのでかなりたまげた。彼は大学生とのことだが、その世代のイタリア人はみなルパン三世をみながら育ったのだそうである。アルプスの少女ハイジだのらんま1/2だのばかりが海外輸出されていて、なんでルパン三世はみなしらんのだろう、と思っていたので、ちょっとうれしかった。日本人がイタリア語を学ぶのにもイタリア語版ルパン三世はよいかもしれない。