知り合いの日本人研究者が、うちの研究所に舞い戻ってきた。日本発海外ポスドクのお定まりコースは、二年滞在でUターンであり、その作法にしたがって昨年帰国、就職したものの、研究はともかくこのままでは将来がみえない、とかで戻ってくることにしたのだという。帰国以来、何度か苦悶のメールを受け取ってはいたのだが、次に海外出るときは邪道だから日本に帰れなくなるかもしれないよ、今度はサバイバルだし将来がみえないのはどこでも一緒、と一応警告のお返事を書いた。それでも舞い戻ることを決意した彼はよっぽどつらかったのかもしれない。そう思いながら駅まで迎えに行って久しぶりに見た彼は、思いのほか妙に晴ればれとしていた。捨ててくるよろこびのほうが大きかったんだろうな、と思って詳しい事情をきくこともなく、ゲストハウスまで送り届けた。