パリ

今後姉に会いにくくなりそうなので週末はパリ。「牡蠣食べ放題にいこう」というので、まあいいか、と思って連れられていったのがどこぞのジャズバー。演奏を聴きながら牡蠣乱れ食いということになった。91個の牡蠣をシャブリと共に腹に流し込んだ。おそらく私の最高記録。姉は50個で腹痛を起こして笑いながらやめていた。
最初はパリまで車でいこうかと思っていたのだが、一人で行くのだし本も読めるし、と思い直して汽車で行くことにした。時間は余計にかかるが、春の野や林を眺めながら旧式の客車に乗って旅するのはなかなか風情があってよかった。仕事のネタももっていったのだが、結局それには手をつけずに、ボケッとしたり、日本の本をタラタラ読んでみたり。帰路、今度こそ仕事をしようと汽車に乗り込んだら、同じ客車に偶然研究所の仲間が乗っていた。スペイン人の彼女とスペイン料理のことや馬鹿話をしてゲタゲタ笑っているうちに家についてしまった。
話が後先になる。姉が駅まで車で迎えに来てくれたのはいいのだが、ものの5分たたないうちに車がオーバーヒートを起こして買い物客観光客がうろうろしている道の脇で頓挫。冷却水が漏れているので、タンクを見てみたら、最大許容量の線を遥かにこえて目一杯冷却水が入っている。圧が上がりすぎて高温になり、なおかつ弁が開いて冷却水漏れになったのだろう、と推察し、なんかホース買ってきてよ、と姉に頼んで私は車の中で待った。しばらくするうちに姉が戻ってきて、これしかなかった、と水道の蛇口と洗濯機の給水口を繋げるプラスチックのホースを私に渡す。うーむ、サイホンをしたい、という意図が伝わらなかったのだな、文理の壁、などとおもいつつ無理やりどうにかそのカチカチのホースでサイホンをして冷却水を排出した。
4年程前に姉を訪れたときにも迎えの車で家に向かう途中、同じくオーバーヒートでパリ市警のまん前で立ち往生したことがある。水蒸気がもうもうと噴きだしてどうしようもない状況になり、ノートルダムを望む停車禁止の市警の前で停車した。警官がふたり駆け寄ってきて、ここはなにがあろうと停車禁止だ、行け、という。でもこの状況で車動かせないんだけど、と私は言って、一方で姉はぶちぎれて警官に向かって怒鳴り散らしていたが、警官は首を横に振るばかり。姉は悪態をぶちまけながら、車線の反対側に車を動かして、これみよがしにそこに停車した。外交官ナンバーだからか、反対車線ということで満足したのか、警官はそれ以上追及してこなかった。とりあえず、水買ってきてよ、と姉にいうと、姉は水を買いに行き、私はものめずらしげに眺めるアメリカ人団体観光客の目を見返しながら待ったのだった。そのホンダ車は一年しないうちに潰れて廃車になった。
かくして4年後、今度はBMW車、ほぼ同じ状況でオーバーヒートした車の中で、汽車で読んでいた”嗤う日本の「ナショナリズム」”の続きを読みながらラジオを聴いていた。局は”Radio Nova”。なんとまたまた、なのだが、ジャイルス・ピーターソンのワールド・ワイド・ラジオ・ショーが流れていた。東京に引き続き、時空が接続。

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