一年に一回の健康診断があった。研究所には医務室がないので、街の大学病院に行って診断を受ける。すでに何回か行っているためか、身長測定も体重測定もなく、血液と尿の検査だけだった。いつもながら問診でなんとなくこまったことになる。”ウィルスは扱っていますか”。すごく時々扱っているんですけど、危なくない使い方です。なんて答えになるのだが、これは解析法を査定するのにウィルスを使った実験がごくたまに便利なわけで、ウィルスの研究をしているわけではない。感染している細胞ちょっと貸してよ、みたいな感じである。でもよく考えたら最近レトロウィルスとかも使っているよなあ、なんて思うが、時々つかうことも、というと、医者が目を険しくしてどんな風に?とトーンが毎度のことながら上がるのでどうも逡巡してしまう。ローティーンのころに、警察署で激しく尋問を受けたときのことを思い出していやーな気分になる。いずれにしろ血液検査や尿検査の結果は上々で、大学院を終えてボロボロの肝臓で初の検査を受けたときよりもよっぽどいい。医者も大満足である。