矢面

本宮ひろしの漫画関連の話題。なんとなく誰も書いていないなあ、なんて思ったのは、日本の漫画って中国、東南アジアもまた巨大なマーケットなわけで、商売から考えれば漫画の内容は妥当なんじゃない、ということ。ヤングジャンプ憂国少年雑誌ではなくて商業誌なんだから。これで中国でまたぞろナショナリズムが盛り上がって日本の漫画アニメテレビ番組ボイコットなんてことになったら、それこそ日本経済に対する損失だ(笑)。憂国の士の勇敢なる行動、転じて日本経済に横槍、てなことだ・・・などと思いつつ、南京虐殺については、「愛国心」をめぐってid:kmiura:20040731#p1、id:kmiura:20040731#p2なんかでも少々書いたので繰り返さない。
私は個人の希望で勝手に海外に住んでいる。とはいえ、こうしたことで最前線で矢面に立たされるのは結局海外在住の人間なわけで(まさに風が吹けば桶屋の世界な気分だが)、本宮ひろしと集英社に抗議した”憂国の士”は、スジとおして南京まで飛んで街頭に立ち、”南京大虐殺はなかった、君たちは騙されている”と、最前線でやってちょうだい、とヤケクソ気味にゴネたくなるのだった。日本国内で「あれはなかった」と日本人に向けて叫んでいる姿は、その妥当性とはまた別に文字どうりの自慰にしか見えない。「ぼくちゃんは間違っていない」と押入れの中でブツブツつぶやく退行気味の人間の姿を私はまたもや思いだすのだった。

気分としては同じく海外在住のid:Soredaさんの今日の意見(id:Soreda:20041014)に近い。

私があれこれ言っていることは殆どの場合日本にいる日本人の人には伝わっていないであろうという考えもある。東アジアの人が怒るのは当然だ、という範囲をすでに超えているということが、多分伝わらないだろうなと思うのだ。

だって当然でしょ、それは仕方ないのよ、と言う人を一般には自虐と呼ぶらしいが、私にはこの頃それは保身だなと思えたりもする。つまり、どのみち日本の中にいれば誰が世界中で大声で日本人を罵倒していようとも、それがひるがえって彼ら自身の個人の行動にとってそれほどプラスにはならないどころかマイナスになっていようとも、どうってことはないから。我が身の道徳を自分自身のために解いている方がどれだけもこれだけも楽なことだろうからだ。