kmiura2004-10-11

秋の訪れの冷たい風に牡蠣への思い断ちがたく、週末にノルマンディまで往復。片道800キロなんで、大阪から北海道まで魚を食べに赴くかのごとき愚行ではあるかもしれないが、途中パリ飯というオマケもついていたのでOK。パリでは姉に電話、食事を一緒にした。水村美苗の「私小説」のことをさっそく喋ったのだが、彼女はその内容を良く知っているがあえて読まない、とのたまわっていた。なんでわざわざ心をチクチクさせなきゃいけないのよ、とのこと。意外に彼女は水村美苗について詳しく、「私小説」が批評空間に連載されていた当時には友人の間で結構噂が飛んだらしい。水村美苗は書くつもりがなかったのだが、岩井克人がおもしろいから絶対に書け、と強力に勧めた結果、書かれた、というような事情などなど。
ノルマンディでは魚介類三昧。友人宅は海岸の目の前に建っていて、バルコニーからは低気圧で荒れ狂う灰色の海がずっと見えていた。第二次世界大戦の折には、私の寝ていた部屋のバルコニーからドイツ軍の兵士が射撃していた、というから妙な気分だった。魚市場に行くと、あいにくの悪天候で品薄だったが、ヒラメとタイを発見、持参した出刃包丁で刺身にして食した。ヒラメについてはどれが日本のヒラメなのか、という議論もあるが*1私が見た限りではBarbueが一番日本のヒラメに近く、5枚におろしてみたら、まさに日本のヒラメの味とテクスチャーだった*2カニ味噌の豊富な”眠り蟹”もついに酢醤油で乱れ食い。牡蠣は白い牡蠣で、とてもクリーミーな味だった。養殖場まで直接のりつけて買ったのだが、1級の牡蠣で1ダース4ユーロと格安。これまた乱れ食い。
ついでに、有名なノルマン征服のタペストリーもバイユーで見てきた。長さ70メートルの刺繍絵巻でなにげに鳥獣戯画を連想させる世界。戦争のあとに死者から甲冑を略奪する様子まで克明に記録されていた。