ツィラタール Zillertal

ツィラタールはオーストリアチロル地方U字谷。3000メートル弱の山脈が両脇に連なっている。スイスと違って物価の安いオーストリアはより庶民的なスキーエリア、ということになっている。大学院のときの研究室のボスが、3人の友達と共同で、ツィラタールに別荘を借りていて、毎年研究室のスキー合宿がある。その研究室はボスが「地球を救うため(本人談)」大学を飛び出して仕事を顕微鏡からリモートセンシングに変えてしまったので今や存在しないのだが、酒の量と荒っぽさで妙に気のあった研究室だったので、いまだに8人が毎年スキーと酒飲みのために集まっている。 二日酔いでふらふらになりながら滑るのが恒例行事。ちなみにボスは大学を辞めて会社を作り、立派なことにネイチャーに二本立て続けに論文を出して、一本は表紙になった。あわてた大学側が再び認め、新しい研究室を持っている*1。ツィラタールにはいくつものスキー場がある。いわば志賀高原U字谷の絶壁をゴンドラで越えるとそこがスキー場。1日目と3日目はカルテンバッハ、2日目は数年前のスノボ初日に腕の骨を折ったツェルのアリーナスキー場。

ボスの友達で、スノボの先生もしている人が今回は合流。話には聞いていたが、あっけにとられるほどスノボがうまい。カービングの時に、体が雪面スレスレまで倒れるのだ。ほとんど水平に見えるほどなので、クラッシュか、と一瞬ハラハラするが、そのまま何事もなかったかのようにカーブをぬけると、更に加速しているのだ。バイクのレースで見る美しいハングオンによく似ている。見ると真似したくなる私もトライ。かなりスピードがでていないとダメだ、とスノボの先生が言う。そこでクネクネとエッジで滑降して加速、高速になってから覚悟を決めて体をぐぐっと倒す。しかしそのままエッジがドリフトしてクラッシュすることの繰り返し。クラッシュは高速状態なのでかなり激しく、背面から谷側に跳ね飛ばされて落下し、しばし呆然とすることも何度か。それでも3日目には先生ほどではないが、くっついて滑走しているいちに30度ぐらいまでは問題なく倒すことができるようになった。雪面に目線の高さが接近するので、速度感が増幅され、Gも伴ってアドレナリンの過剰分泌。

*1:ボスの武勇談はいろいろあっておもしろいのだが、一つだけかいておくと、学生のころに日本企業が東南アジアの環境を破壊していることに抗議するため、ドイツ某所にある日本総領事館の屋上を泊り込みで不法占拠して旗を掲げ、逮捕されている。