ミュンヘンでNATO安全保障会議

NATO安全保障会議。45カ国から280人の参加者。NATO各国の国防相ミュンヘンに集まって、今後の軍事政策について討議。ラムズフェルドも参加して、フランス・ドイツのイラク復興への協力を要請した。一年前の「古いヨーロッパ」発言を撤回しないところが、いかにもラムズフェルド

会場はホテル「バイエリッシャーホッフ」。週末の2日間、会議が行われた。何しろ50人の各国閣僚である。ちょうど私もミュンヘンに遊びに行っていて、厳重な警備を予想していたが、デモの対応以外はホテルの周りのブロックだけに人員を集中投入して封鎖していたらしく(写真)、街への流入規制はなかった(警備状況に関する記事)。警察に職務質問されることもなかった。私は黒い髪で、ヒゲを生やしているためか、普段から警官に捕まる頻度が非常に高い(ぼこぼこにへこんだ車に乗っているのがいけないのかもしれない)。911の後の一週間などは車の後ろでパトカーがサイレンを鳴らし、道路わきに強制停車、職務質問が計5回、だった。今回はそんな暇もなかったのかもしれない。ホテルのまわりの建物の屋上にはスナイパーが配備されていた、という写真も、夕刊紙でみかけた。

南ドイツ新聞が今回の安全保障会議の特集をしている。なにしろミュンヘンに本部がある新聞社である。本社ビルからバイエリッシャーホッフまでは、歩いて15分もかからない。
デモに関して。NATOのデモ行進がマリエンプラッツを中心に行われた。参加者は5000人(写真)。対する警官の数は4000。ほぼデモ参加者一人に対して一人警官、という状態。地元のバイエルンだけではなく、周囲の各州からも動員したという。デモ参加の報告も南ドイツ新聞に。デモ警備の警官の多さに苛立つデモ参加者、という内容。

バイエリッシャーホッフは街の真中から西に1キロ、ちょうど昔の城壁があったところのギリギリ内側に位置している。マイケル・ジャクソンがドイツに来たときには定宿にしているホテルで、そのたびにホテルの前の路上に若い女の子達が集って徹夜するのが恒例になっている。地下にはジャズクラブがある。時にはゴンザロ・ルバルカバやコートニーパインといった凄腕がやってきて演奏するのだが、なにしろジャズに人気のないドイツだけに、観客は数十人。エントリーが1500円ぐらいなので、たまげたものだ。ライブの後にコートニー・パインと雑談したことがある。ストリート・ファイターに熱中しているとかで、「あれで指鍛えるんだよー」とか言っていた。ゴンザロ・ルバルカバは毎年来ていたが最近は見かけない。ソロの日が一晩あって、鬼気迫る演奏で私は腰を抜かしそうになった。でもこうしたジャズはあまりに人気がないために(いや、チック・コリアの時は着飾ったオヤジとオバサマで満員だったが)、最近はコンポストの若手とかがDJしたりしている。

昨年のイラク政策の差の結果、EU結束でアメリカとの溝が深まった。今回討ち入るラムズフェルドへのヨーロッパ側の対応が注目を浴びた。特にフィッシャーとラムズフェルドの対決は昨年のことがあるだけに、好カードである。なにしろ片や元左翼武闘派、片や元海軍レスリングチャンピョンでもある。いろいろな報道を見る限り、ラムズフェルドは一応、借りてきた猫、といった面持ちだったらしい。攻めも守りもなく、平行線。ドイツのフィッシャー外相は、「そもそものイラク侵略の根拠に、深い疑念を感じている」。と大量破壊兵器が見つからない件に関して釘をさした(ロイター)。「ベルリンは戦争に反対している」、ドイツは国軍をイラクに送らない、とも明言。一方で、NATOによる介入を邪魔しません(VOA)、というのは、このところ国連による介入が前面化してきていることもあるのだろう。どの時点でドイツが参入するかをうまく見極めているように感じる。