書いてはいないがおそらく美濃口さんが書きたかったのは「イラクに派遣された自衛隊員の性欲処理はどうなっているのだろうか」ということだ、と私は深読みしてしまう。

美濃口坦さんの「二つの老婆心」。

南極越冬隊員が持参した南極2号ではないが、この当然存在するであろう問題に関して触れているメディアを未だに見かけない。戦場へ赴く、ということから性的な側面が見事に隠蔽されるのは、どこかしら、戦争ということに対してストイックな精神性を掲げてしまう日本人の性向がよく現れているように思える。「武士道」発言にもこうした精神性が反映されているのだろう。性の問題は、美濃口さんのコラムにあるように、身も蓋もない、という印象になるが、議論されてしかるべき問題でもあると思う。戦場における強姦陵辱といった行為は半世紀以上前の日本を振り返るまでもなく、現在世界各地で起きている局地戦でも常に問題になる話である。自衛隊派兵から性的事象が去勢されているのは、派兵計画の非現実性を物語っている。なおかつそれを裏打ちしているのが、奇妙に高潔な精神性なのだ。