夢の映像

ネイチャー。ネコが眼を閉じているときに、スポンテニアスな映像が内部的に生じている、ということがわかったそうである。


People's tendency to see what they expect to see may be caused by their brain constantly generating virtual sensations. So suggests a new study of sleeping cats.
最初のパラグラフを見たときにStochastic Resonanceの話だろうか、と思ったのだが、もっとおもしろそうな話である。

外部からの情報のみが脳内の神経発火を起こして映像情報に変換されるだけではなく、内部からも映像情報が自発的に生じている、ということなのだ。さしずめ白昼夢が実証されたとでもいえばいいだろうか。

ところで大森荘蔵がかつて視覚に関して「重ね合わせの原理(だったかな)」を説いた。彼の説明によれば、視覚とはすなわち何枚も重なったフィルターであって、ではそのフィルターを受けた光が最後にたどりつくのはどこか、というとそこには何もない。デカルト以来の視覚理論は複雑さを増したとはいえ、そこに映写機からの映像を投影するスクリーンのような投影先を前提としているが、その投影先が重要なのではなくて、そのフィルターそのものが視覚である、とするのが「重ね合わせの原理」である。ここから考えられる単純な定義は「知覚とはフィルターにすぎない」ということで、これはサイエンスの立場から言うとしごくまっとうで面白い理論であると私は思った。

さて、新しい知見はこの「重ね合わせ原理」にどのように組み込めばよいのか。単純には光強度が強すぎてフィルターに残像が残るような履歴を考えればいいのだが、私自身が見る夢のことを考えると残像といったスタティックなメカニズムでは役不足である。なおかつ、フッサールがキーワードににた「志向性」のような知覚が実証的な世界に浮上してきたともいえる。内部的な映像世界と、外部的な映像世界が交わる境界にに知覚が現れる、ということになるからだ。